シャーロック・ホームズ

□今日はお出かけしよう
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「ミレイ、今度の休日、お出かけしに行かないか?」
「お出かけ?いいけど、どこへ行くの?」
「そうだな……軽食と散歩程度に。どうだい?」
「もちろん、いいわよ」





……と、快く返事してしまったのだが、後々考えるといろいろとやばい。
いや、嫌なわけではないのだ。もちろん嬉しい。

だが、休日に二人でお出かけということは……私とホームズの関係を含むと……。
私の感情は忙しいもので、早速緊張してきた。

そもそもホームズと休日を過ごすというのは初めてで、今まで恋人らしいことをして来たのは学校にいる間だけだったのだ。
お互いの休日を覗くということで、ポンポンと気になる点が出てくる。
ホームズの私服姿だとか、そもそも隣を歩いてみる印象とか、その他細かい点もろもろ。

その反面、ホームズの知らない部分を私だけが知れるという部分は、ちょっと誇らしい。





「……服、どれにしようかな」





休日どんな服を着ていくのかを選ぶだなんて、とても新鮮な気持ちだ。
思春期の女子を謳歌しているようで。





「あ、当日は僕がミレイの家まで迎えに行こう。それでいい?」
「え、ええ!じゃあ、何時にしたらいい?」
「そうだね……10時くらいにしよう。軽食にはちょうどいい時間だ」





日にちだけならまだしも、当然のことではあるが時間まで決まっていると、その時間までに何をするとか、スケジュールを先取りして考えてしまう。
そして結局、その日になるまでずっと考え続けていたことは、あまり言わないでほしい。










***










そして、思ったより早い休日。
久しぶりに家に帰り、親に顔を見せてから"一人で"お出かけしに行くと嘘をついた。

ビートン校は何せ寄宿学校であるから、なかなか家に帰って親に会うことは少ないし、思春期の楽しみとしてホームズのことは秘密にしている。
この嘘は簡単に通じ、自分の部屋がある家の二階に向かった。

うん、やっぱり懐かしい。





「……かれこれ悩んでたけど、これが良いかな」





まったくその通りで、悩んでいたのにも関わらず絞るには絞ることが出来ていた。
それは、白のブラウスに黒のスカートというシンプルな服装だが、とてもお気に入りの服だ。
あとは小さく薔薇が刺繍されているタイツを穿き、オールドローズ色のポーチを肩から下げた。

きっと制服姿と見比べたら派手だろうけど、デ……お出かけには最適だろうと思う。
最後に、靴はワンストラップシューズといって、つま先あたりに花の飾りがついている、全体が黒のフォーマルな靴を選んだ。

……やはりちょっと派手だろうか。





「……シャーロック?」
「!ミレイ」





私は約束の時間になるべくぴったり着きたいと思うので、ホームズがどういう考えかは知らなかったが、案の定彼はそこで待っていた。
彼は私の姿を見ると、嬉しさと安堵が混じった笑みを見せたが、すぐにぼうっとこちらを見つめ始めた。





「どうしたの?……もしかして、おかしい?」
「!!いや、そんなことはない。寧ろ綺麗で可愛い……」
「ほ、ほんと?」
「あっ、まぁ……そうだね」





その言葉が嘘か真かは置いといて、ホームズは"綺麗で可愛い"と言ってくれた。
本当に嘘か真かは置いておき、まだ街へ繰り出していないのにその言葉をゆっくりと噛み締める。

当のホームズはそっぽを向いていた。
……肌が赤みを帯びているわよなんて、言ったらムードが壊れるだろう。





「じゃあ、行こうか。おすすめの場所があるんだ」
「なら、ぜひそこへ連れて行って!」
「もちろん」





今日の目的に話題を移せば、すぐに興奮は落ち着いたようであった。
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