シャーロック・ホームズ
□細かい愛の証
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「シャーロック、この前私が手繋いでみてって言ったの、覚えてる?」
「ああ、もちろんさ」
「それに関してね、新しいことを知ったの。また試していい?」
私はまたあの時のように、物思いに耽るホームズに問う。
手を繋ぐという行為は、恋人間ならば最も初歩的だと思われる。
この前はいろんな繋ぎ方があるという話だったが、今回のはもっとすごい。
「普通の繋ぎ方でいいのか?」
「うん。いいよ」
私たちは"普通"に、手のひら同士を握り合った。
いつの間にか普通の繋ぎ方というのは、一つの方法で浸透しているようだ。
ホームズに関しては持論のようだが。
繋がれた手を少し力を入れれば、彼もそれに応えてくれる。
しばらくその喜びに浸ってから、うっとりとしながらこの行為の意味を教えた。
「……聞いたんだけどね。手を繋ぐ行為って、すごいことなんだって」
「うん」
「ちょっと難しい話になるけど、このシャーロックと繋いでいる部分……その粒子をね、最大限に拡大すると、二人の手の粒子が混ざって境目が無くなるんだって!」
「!ということは……」
言葉は私には少し難しいが、ホームズには気を引く話のはずだ。
私は彼が答えを言うまで待った。
「僕の粒子と、ミレイの粒子は交わっているんだ。分け隔てなく、細胞的に」
「ふふ、そうなの!ちょっと恥ずかしいけどね」
「……なんとも、素敵なことじゃないか。ね?」
「う、うん……!」
細胞レベルで交わっているのが嬉しいのか、私がした以上に握った手の力を強めてきた。
まあその痛みも心地よいものだが。
きっと手を繋ぐだけのことであっても、触れ合うということの素晴らしさを知り、
出来る限り己の肌をホームズの肌と触れさせようと、彼の体を思わず抱きしめた。
そして窓から射す太陽が、安らぎの真骨頂へ導いてくれる。
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