シャーロック・ホームズ

□思わず零れる言葉
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この後、ワトソンが怪我をしてしまったため、一度221Bに戻ることにした。

部屋に戻ったら、怪我をしたワトソンをメアリーが手当てしていた。
痛がっているのと、メアリーに手当てしてもらうのに嬉しそうな顔をしていた。
分かりやすいなぁ。

いっぽうホームズは、事件があったアーチャー寮315Aにて見つけた厚紙を、机の上に並べてにらめっこしていた。





「ホームズ、これは何?」
「……どうやら、サインみたいだ」





元々その厚紙は細かくバラバラにされていたらしく、既に机の上にある厚紙はホームズによって、一枚の絵に繋ぎ直されていた。
その証拠に、ちぎられた跡が嫌でも目に入る。

そしてそこには、ホームズが言った通りサインと思われる文字が4つあった。
しかしそれを見る限り、人の名前のようだった。





「Arthur……これ、アーサー・モースタンのこと?」
「ああその通りだ、ミレイ。あとの3人は……メアリーさん、心当たりはありますか?」
「ううん……ごめんなさい、分かりません」





メアリーが申し訳なさそうに首を振った。
しかしホームズは、詰まった状況なのに迷いがない、寧ろ爽やかな表情をしていた。

何か策があるのだろうか?





「じゃあ、ラングデール・パイクの出番だ。ミレイは初めてだね」
「うん……?」
「学園内の情報屋さ。お金にケチだが、その情報は確実で役に立つ」





ホームズは早く謎を解き明かしたいのか、厚紙を手にして早速221Bを出ようと動き始めた。

ラングデール・パイク、どんな人なのだろう?










***










私たちはラングデール・パイクのところへ来た。
パイクはまるで、ネズミのような感じの人だった。

まずホームズは、パイクにあの厚紙に書いてあったサインを見せ、まず合唱部を当たるよう依頼した。
どうやらホームズには、推理によってメアリーの兄、アーサー・モースタンが合唱部と関係があることが分かったようだ。

パイクは何か狙うような、少しぞわっとする笑みを浮かべて、私たちにあることを要求した。





「今日は料金の代わりに、これ買ってくれる?打ち身、捻挫……擦り傷!なーんでも効く万能塗り薬さ!」
「万能……?」





そしてまたパイクはにししと笑い、先ほどの言葉に1個6シリングのところを2個10シリング!と陽気に言った。
しかし、私たち学生にはきつい値段ではないだろうか……?

でも自然に、私の視線はワトソンのほうへ流れた。
奇遇なことにホームズもワトソンのほうを見ていた。
思うところは同じみたい。

買ってあげなよと言おうとすると……。





「私買います!2個ください」
「メアリーさん!」





さすが、気が強いメアリー。
そんな彼女に、ワトソンはやめたほうがいいと言うが……。





「……ワトソン」
「ワトソン」
「……ぐ……。ま、待って!僕が買うよ!!」





メアリーの勢いか、それとも脅し同然の私とホームズの威圧に押されたのか、ワトソンは購入を決意した。
怪我していたのだからお似合いだろうと、言葉もいらずホームズと笑い合っていた。
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