シャーロック・ホームズ
□さあ、おすわり。
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「犬というものは、実に忠実だ。言われたことしかしないし、裏返せば言われたことは必ず守る」
「……うん?」
「そしてその言いつけは、半永久的となるわけだ」
「……犬が欲しいの?」
「そうだね。犬じゃなくとも、犬のような忠実な誰かだ―」
突然221Bの部屋に響く、ホームズの声。
大して大きくはないのによく響く不思議だ。
そして私はロフトの上から会話しており、微妙に濁した言葉を残したホームズがこちらを見た。
「……」
「……」
「……えっ、私?」
彼がずっと微笑みながら見てくるため、嫌に察しがついてしまった。
人差し指を自分の顔に向け、首を傾げる。
「そう!ほら早くこっちにおいでよ」
「えー……」
とか言いながら軽やかにロフトの下へ続く階段を下り、事件を捜査している時のように目を輝かせたホームズに近づく。
するとホームズはソファに座り、手を顎にかけて考え込んだ。
「…………ミレイ、床に座って」
「えっ、こう?」
とにかく言われるがままに、ソファに座るホームズの目の前に、ゆったりと座る。
すると、とんでもないことを言ってきた。
「じゃあ……お手」
「……お手!?」
「犬をやる気はあるんだろう?」
「……」
おとなしく従ったのは私だ。やらなきゃ、もっとひどいことをされそう。
そう勘が働き、おとなしく右手を彼の右手に置いた。
しかし……。
「それもいいけど……犬らしく、舐めてくれないか?」
「……えっ、手を!?舐め……えっ!?」
「ミレイならそれくらい出来るだろう?」
「…………うぅ」
このご主人様、犬と人間の関係より厄介だ。
それに、ホームズ大好きな私ならやることを突いてくる。
……足を舐めるよりかは人間でいられそうだ。
「……んっ」
「ふふ、面白い。はいおかわり」
「っ……もう!これで終わりだからっ!」
「いや……まだやりたいことがある。今度は指を食んでみて」
だんだんエスカレートしてきた。
このままでは手だけに収まらない。
しかし悩んでる間に、ホームズが私の唇に自分の指を押し付けてくる。
そしてまた仕方なく、彼の指を食んだ。
「っ、うぅ……」
「キスする時と同じ顔するんだね」
「!?」
ニヤリと笑うと、さっと手を引いた。
そして、今まで私が舐めたり食んでいた指を、自らホームズが舐めた。
私が舐めたところを狙って。間接的に触れられている気分だ……。
それがなんとも、色っぽくて憎めない。
「うん……素晴らしい」
「っ……ちょっと、からかわないでよ……」
「からかってなんかないさ。じゃあさミレイ」
ホームズが私の名前を呼ぶと、ソファから立って私の耳まで口を近づけた。
その声と共に、扉が開く音がした。
「次は、首輪をつけようか」
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