シャーロック・ホームズ

□宝石のような美人
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ある授業の真っ最中。
左側には眠っているホームズ、私を挟んで右側に真面目に授業を受けるワトソン。

この授業風景はいつもと同じなのだが、どうも私の体はいつも通りじゃなかった。





「っ……なんだか、眩暈が、する……」





自分にしか聞こえないほど小さく呟いたため、ワトソンにも聞こえていなかった。
やっぱり迷惑をかけたくないという思いもあるからだ。
しかしあまり、それを積み重ね続けてしまったのか―。

私は椅子に座ったまま、ワトソンのほうへ傾き倒れてしまった。





「ミレイ!?」





急にワトソンの体に、ミレイの体が倒れてきた。
驚いて大声を出してしまったため、生徒と教師がワトソンのほうを向く。





「シュヴェルツ!どうしたんだ?」
「あ、先生……急に彼女が倒れて……」
「とりあえず、私が保健室に……」
「先生、僕が行きます」
「ん?」





ワトソンはまた驚いた。
なぜならホームズが起きているからだ。
目はハッキリしていて、起きたばかりなのに普通に立てている。

教師は突然のことに眉間にしわを寄せた。





「ホームズ、君がか?」
「彼女は僕と同室です。少なからずは責任がある。それに先生は授業があるでしょう」
「……」





教師は寝ている君に言われたくない、と言いたそうだったが、ミレイのほうを見て押し黙った。
そりゃあ、今はミレイを保健室へ運ぶことが重要だ。





「……では、頼もう。ほら、授業を再開するぞ」
「……ホームズ」
「ワトソン、もし授業が終わっても221Bにいてくれ。留守番を頼む」
「分かった。彼女をよろしく」
「ああ」





ホームズはミレイを横抱きにして、静かながら急いで保健室へと向かった。

それにしても、ワトソンも誰もホームズを起こした覚えはない。
まさか、彼女への想いだったりして。

―それだとしたら、相当なものだ。





「アドラー先生」
「あら、ホームズ君。……それにこの子は、ミレイ・シュヴェルツちゃんね?」
「はい。その……彼女が急に倒れてしまって」
「分かったわ。で、どうせずっといるつもりでしょ?」
「……ええ」
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