Sweet dreams-DGS
□逆転の秘薬
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※この話には、夜の行為を"想像させる"部分があります。しかし行為には一切触れません。
一応R12か、R15という体でやっていきますので、自己責任でお願いします。
追記:こちらには"薬"とありますが、風邪薬のほうの体で書いております。ご安心を※
「暇だ。……暇なのだよッ、諸君!」
「……そうですか」
「あたしたち三人しかいないけどねー。あ、ミレイちゃん、ハーブティーだよ!」
「ありがとう、アイリスちゃん」
私は、とある理由で221Bに来ている。
ここに来る数十分ほど前、ホームズから"暇だから来てくれ"という電報が届き、バロックにどう伝えようと迷ったものの結局来た次第だ。
ちなみにバロックは屋敷で仕事をしている。
「ホームズさん、あれは何か作っているのですか?」
「ああ、アレね。あまりにも退屈すぎて調合したんだ。ミレイさんに試してほしくてね」
「……あ、怪しい薬じゃないですよね……?」
「…………命に関わることじゃないし、大丈夫だろう」
ホームズが使用している、普通の人から見れば散らかっている部屋の一角にある机の上で、ガラス器具がいくつも並べられていた。
ある物は蒸気のような煙を上げており、ある物は決して安全なものではなさそうな液体があった。
しかし、あまり大丈夫な気がしない。
「ホームズくん、ミレイちゃん困らせちゃダメだよー」
「大丈夫大丈夫。おそらくだが……死神くんにも影響をもたらすだろうね」
「検事のお兄ちゃんに?」
「バロックさまにも何かするのですか……?」
「それはミレイさんによるよ。ホラ、ホラ、飲んで!」
「ええええ」
ほぼ強制的に、ホームズが怪しい薬を飲ませようとしてくる。
命に関わることではないと言っているが、それじゃなくとも飲む気にはなれない。
なかなか飲もうとしない私に痺れを切らしたのか、ホームズがこんなことを言った。
「そんなに嫌なら、成分を説明しよう」
「え」
「その薬には、神経を昂らせる成分が含まれている」
「……興奮、ですか?」
「ああ。どちらかと言えば……じれったくなってくるんだ」
それはもしや、性的なことなのではないだろうか。
よくわからないがホームズがすごいのはわかった。
「んー……」
「…………」
「そ、そんな目で見ないでください……。わ、わかりました、被験者になりますから!その代わり屋敷で、でいいですか?」
「……まあ、仕方ないね。きちんと報告するんだよ?電報使ってでもね」
「で、電報は無理です……!」
"屋敷で飲む"という条件付きなものの、OKと返事をすれば、ホームズは一瞬で満面の笑みに変わった。
念のため詳しいことを聞いたら、飲む量によって持続時間が変わるそうだ。
飲んだ瞬間に効くとまでは行かないが比較的即効性があるので、就寝直前にでも試そうか。
「本当にミレイさんがいてよかったよ。絶対僕の知人は被験してくれないだろうからね」
「ミレイちゃんが優しすぎると思うの。断ってもいいんだよ?」
「確かに、アイリスちゃんもごもっともだけど……もし断ったら、ホームズさんの退屈の影響が皆に及ぶでしょう?」
「!……ううっ、なんて良い人なのー!」
アイリスは余程嬉しかったのか、一瞬驚いて固まるもだんだん目が潤んできて、ついには私に飛びついてきた。
ひどい言われようのホームズはというと、知らんぷりである。
「気分も良くなってきたところで……ミレイさん、ストラディバリウスの音色を聴いてみたくはないかい?」
「ストラディバリウス……?」
「ホームズくんの愛用のバイオリンなの!」
「じゃあ、紅茶のお供に聴いてみようかな?」
「では、ミニリサイタルの開催といこう」
私とアイリスは並んでソファに座り、ホームズはガラス器具の並ぶ机の脇に置いてあったバイオリンを手に取り、私たちの向かいのソファに座って弾き始めた。
221Bの部屋なのに、ミュージカルやオペラの劇場か何かにも感じられた。
特に曲数は決まっていなかったため、ただホームズの気の向くままにリサイタルは続けられたものの、飽きることは一切なかった。
「……ああ、素敵なひとときを過ごせました」
「それはよかった。おかげで、更に退屈が紛れたよ」
「あっ、もうこんな時間。バロックさまも待っておりますし、帰らせていただきます」
「ミレイちゃん、寂しいけど……またすぐに来てもいいからね!」
「僕のバイオリンが聴きたかったら、いつでも言ってくれたまえ。あと、薬の報告も忘れずにね」
「はい!ホームズさん、アイリスちゃんも、ありがとうございました」
別に行こうと思えば毎日会えるのに、これが最後かのように惜しむアイリス。
二人に礼をしてホームズ宅を出発した。
さて、どうバロックに説明しようか…と考えあぐねた帰り道は、夕日が傾いていた。