Sweet dreams-DGS

□14話
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私たちが乗っている列車は、国内を往復する線なのだが、観光客や地元の人もよく乗る評判の列車のようだ。
車内に入り、先ほどホームズに言われた通りに座席に座ろうとすると、ちょうど列車がカーブに差し掛かり、車体が揺れた。

私が後ろに倒れそうになると、揺らぐことなく保っていたバロックに腰に腕を回され、なんとか倒れずに済んだ。





「あっ……ごめんなさい、バロックさま」
「構わぬ。それより大丈夫か」
「はい!バロックさまのおかげで」
「そうか。ならいい」





そうとは言ったものの、バロックはずっと腰に腕を回したままだった。
私としても、大いに安心した。

座席は、ホームズとアイリス、スサトとジーナ4人が向かい合わせの席に座り、
通路を挟んで隣の席にリューノスケとアソーギが座り、向かいには皆の今は必要のない荷物がまとめて置かれていた。
そして私とバロックは、4人組の席に背中合わせの席に、二人きりで座らせてもらった。





「窓際がいいか?」
「あ、バロックさまがいいのなら、そこがいいです」
「あぁ、座るといい」





乗り物酔いがあるため、景色を見るのが一番だという意味で窓際に座った。
背もたれの向こうにホームズたちがいるが、見にくいとはいえこれでイチャイチャしろということだろうか。





「なんか、すみません……私たちだけ……」
「気にしなくていいんだよ!ミレイちゃんたちのためだからね!」
「そうなの?アイリスちゃん」
「まあ、そういうことで、有り難く座ってくれたまえ」





気のせいだろうか、ホームズとアイリスの間に何か企みがある気がする。
それは置いといて、長旅ほどではないが数時間かかるため、駅から離れていくたびだんだんとゆったりしてきた。

ほんの少し立ち上がって、後ろの皆を見ると早速談笑していたり、トランプで遊んでいたりしていた。
座り直し、隣のバロックを見ると車外の景色を見つめていた。
突然、寂しい気持ちが湧き上がってきて、彼の手をおもむろに握った。





「ミレイ?」
「なぜか、隣にいるのに……寂しくなってしまって」
「……そなたは本当に寂しがり屋だな」





バロックはそう言うと、私が彼の手を包み込むように握っていたのに対し、互いの指を絡ませて二度と離さないかのように握り直した。
寂しいなんていう気持ちはすぐに吹っ飛んでしまい、口端が上がるのを抑えきれず、それを隠すようにバロックにもたれた。

いつかの日のように、こうやって彼にもたれると眠たくなってくるのだが、今回はある人物によって静止された。





「悪いね。二人とも、軽食はいかがかな?アイリスお手製だ」
「まあ!ありがとうございます」
「はい、死神くんも」
「……貰っておこう」





真後ろの座席から、ホームズがこちらを覗いてサンドイッチを渡してくれた。
アイリスお手製ということで私は喜んでもらい、気の進まなそうなバロックは私がもらったのか、しぶしぶ受け取った。





「あ、バロックさまと私のサンドイッチ、具が違いますね」
「……私のは卵で、そなたはレタスとハムか」
「……」





私とバロックでサンドイッチの具が異なり、もちろん自分のも食べるつもりだが、どうしても彼のサンドイッチも食べたくなってきた。
彼の目を逸らすことなく見つめ続け、目で伝えようと試みた。

両手にも至らないほどの時間が経った頃、バロックのほうが折れた。





「……私のもやるから、そんな目で見ないでくれ」
「ふふっ、ありがとうございます。私もあげますから、半分こにしましょう」
「初めから言えばいいものを」
「両方食べたいんですっ!」





結局、お互いが持っていないものを一口目に食べた。
角が似たように欠け、思わずくすりと笑いが零れる。

そのあとは、きちんと自分が貰ったものを食べきった。
ほぼ同時に食べ始めたのに、なぜか私がバロックより遅れて完食した。





「……遅くないか」
「た、たまたまです!ほ、ほら、景色もあってゆっくりになるんですよ……」





片方の口端を上げ、からかうように笑うバロック。
そういえば、かなり前にメイドさんに言われたことがある。

"ミレイさまは、主と同時に食べ始めたのに、遅く食べ終わるのです。極端なことを言えば、倍の時間が……"
とか。

食べ物を食べ終わったあとは、なんとなく眠たくなるものだ。
照れ隠しも含めて窓の外の景色を眺めていると、目が閉じそうになり、慌てて起きるというのを繰り返して、ついには閉じてしまった。
夢の世界には入っていないものの、ぼんやりとしていて起きる気力はなかった。





「おや……眠ってしまったか」





ただ、起きるときに覚えていることは、手を握る以上にバロックの温もりを感じたことだろう。
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