Sweet dreams-DGS

□14話
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「主、ミレイさま。どうかご無事で」
「メイドさん、心配しなくてもいいですよ。旅行ですから!ただ、良い結果を祈っていてくださいね」
「ミレイさま……!」
「では、行ってくる。屋敷のことは任せた」
「はっ、主」





出発の朝は、あっという間に訪れた。
夜に着ていた着替えなどをトランクに詰め、朝食をいつもより少なめな量で済ませた。

心配性のメイドに笑顔でさよならを言って、馬車を捉まえた。
駅まではそんなにかからず、馬車から降りるとすぐに見知っている人の姿が見えた。





「ホームズさん!アイリスちゃん!」
「あー!ミレイちゃんに、検事のお兄ちゃん!」
「やあミレイさん、死神くん。さすがお二人。ほぼピッタリに来たね」
「ふん……」
「ふふ、楽しみだね、アイリスちゃん」
「うん!一緒に行けて嬉しい!」





ホームズとアイリスが先に到着しており、特にアイリスは飛び跳ねて喜んでいた。
まだ日本組とジーナが来ていないようだった。
日本組は、ミスターアソーギと共に行くため、彼らがまとまって来るようだ。





「日本の方々と、ジーナちゃんが来ておりませんね」
「ミスジーナはともかく、大方ミスターナルホドー辺りが寝坊でもしているのだろうね」
「あれー?寝坊しそうであたしに叩き起こされたの、誰だっけー?」
「……どれだけ寝過ごしても余裕で素早く準備をする、探偵の基本さ」
「ふっ、見苦しい」
「ホームズさんったら……」





さらっと言ったが、きっとアイリスに起こされなければ遅れていたのだろう。
腕を組んで、無表情ながらに見下しを感じる顔をするバロックに、呆れてため息をつくアイリス。
ホームズとアイリスは毎日こんな感じなのだろうと、微笑ましく思えた。

すると、慌ただしくこちらに駆けてくる足音が。





「すみません、皆さん!」
「申し訳ございません……」
「待たせてしまいましたか?」
「ミスターナルホドー、ミススサトに、ミスターアソーギ。構わないよ!この二人も先ほど来たところだしね」





おそらく相当走ってきたのだろう、汗だくで息も絶え絶えに、日本の三人がやって来た。
そして、赤く細い布のようなものを頭に巻いている彼が、今回初めて顔を合わせる"ミスターアソーギ"だろう。





「初めまして。ミレイ・シュヴェルツと申します」
「!成歩堂から何回か聞きました、亜双儀一真です」
「……バロック・バンジークスだ」
「よろしくお願いします。確か貴方は、検事と聞きましたが……」
「あぁ……何度か、そこの留学生と手合わせもしてきた」
「その、お世話になりました。コイツいろいろあって……」





アソーギも弁護士で、祖国の日本の司法を変えるためにイギリスに学びに来たのだとか。
リューノスケと同い年だから、アソーギも年上だということか……。
それにしても、私と近い年齢で弁護士とは、物凄く真面目でいい子なのだろう。

少し会話が途切れれば、日本男児二人が口論とも思える会話を繰り広げる。
また私とバロックとは違う、深く切れることのない関係なのだろう。

どうやら、リューノスケも寝坊したらしい。





「おや?ミスターナルホドーも寝坊したのかい?」
「だ、だってベッドがふかふかで……!」
「今更言っているのですか?成歩堂さま……」
「まったく……」





アソーギが頭を抱え、スサトがため息をついた。
また似たような状況に笑っていると、こちらに駆けてくる小さい足音がした。





「あ、ジーナちゃん!」
「ご、ごめん。準備に時間かかって……」
「やあミスジーナ。これで全員揃ったね」
「とにかく人数確認するよ!世間話は列車の中でしてねー」





最後にジーナが来て、駅でもひときわ目立っていた私たちが一度黙った。
合計8人、しっかり者のアイリスによって人数確認がされた。

―人数はピッタリということで、ホームズが列車の座席について話した。





「まず、8人ということで2人ずつに分ける。僕とアイリス、ミスジーナとミススサト、ミスターナルホドーとミスターアソーギ」
「そして……ミレイちゃんと検事のお兄ちゃん。普通は皆向かい合わせに座るけど、二人は二人きりにしてあげるの!」
「……どういうことですか?」





普通なら、通路を挟んで8席のはずだが、アイリスによって耳打ちされたことがこうだ。
"二人がイチャイチャしやすいでしょ?皆の意向だよ!"

だそうだ。それをバロックにこっそり言うと、なんとも複雑な表情を返された。
嬉しいような、公開処刑のような気持ちである。





「さて。時間に余裕を持つために早めに設定したが、もう列車の時間が迫ってきている。向かうとしようか!」





ホームズの掛け声で、私たちは駅の舎内に入っていき、手続きなど全て彼に任せて列車へと乗り込んでいった。
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