Sweet dreams-DGS

□二人だけの秘密!
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ある日の昼頃。
今日はバロックも特に用事もなく、珍しく良い天気だったので二人で散歩していた。

その散歩は多くも会話を交わさず、ただ二人寄り添って歩いているだけ。
それでも昼食頃になれば、意味深に顔を合わせ、”食事をするか”という風にレストランに入る。
そんな穏やかな散歩で、いくつもの店が並んでいる街道へ入ったところだった。





「あ……綺麗……」





私はある装飾の専門店らしい、小ぶりな店のショーウィンドウに目が行った。
装飾専門と言うだけあって、ショーウィンドウには人の部位を飾るものばかり。

私の心を奪ったのは十字架のネックレスで、その十字架にはなんと、薄ピンク色の石が同じく十字に埋め込まれているのだ。
これは所謂、宝石なのだろうか?

飾りには特に興味があるわけでもないが、この美しさには惹かれるものがあった。





「ミレイ、どうかしたか」
「あ……いいえ!何でもございませんよ。行きましょう!」
「……そうか」





あまりにも食い入るように見ていたため、バロックを心配させてしまったようだ。
そういえば、まだ公園ならばいいものの街となると人が多くて危ないため、手を繋ぎながら歩いていたのだ。
そりゃあ離してしまえば、心配にもなるだろう。

―そんな風に散歩の時間は終わり、一週間も経たないある日のことだった。





「ミレイ、ちょっと来てくれ」
「?はい」





バロックに滅多に行かない自室に来てくれ、と誘われたのだ。
不思議には思ったが、断る理由もないのでついて行った。

彼は、部屋に堂々と居座る業務用のデスクに座ってまた私を呼んだ。





「ここに来い」
「はいっ、バロックさま」
「こうやって……後ろを見せて」
「後ろ、ですか?」





バロックは自分の膝に座れ、と命ずる。
私はそれに従い、向かい合ってそこに座ると、腰を掴んで抱え上げられ、後ろから抱きしめられるような体勢になった。





「では……目を閉じていてくれるか」
「わかりました……?」
「そのままだぞ」
「はい」





言われるがままに目を閉じて、バロックに全てを委ねる。

すると、私の髪を束ねて前のほうに垂れさせた。
目を閉じていても、首の後方を無防備に晒しているのがわかる。
突然首にひんやりと冷たい、何か金属のような細い”何か”が当たった気がする。

バロックの指が私の首を滑る。それには繊細さも感じさせた。
その先ほどの金属のような何かは、繊細な指づかいと共に首に巻かれた。





「バロックさま……これ、は……?」
「……よし。ミレイ、目を開けてもいいぞ」
「?……あ……!」





ゆっくりと目を開け、首のあたりを触れてみる。
下のほうを向けばそれは、すぐにお目見えした。

首にあったのは、数日前の散歩のとき、私が気に入った十字架のネックレスだった。
十字架は胸の間くらいにかかり、埋め込まれた薄ピンク色の石がランプの仄かな明かりにより、煌めいていた。





「ば、バロック、さま……!あの、その……!」
「以前……そなたが物欲しそうに見つめていたからな。あと」
「あっ、もしかして、お揃いですか……?」
「それもそなたがお揃いの物が欲しい、と言っていたのでな。どうやら。色違いのペアだったようだ」





感極まってバロックのほうを振り向くと、彼もネックレスをかけていた。
それは十字架に埋め込まれている石が、黒の色違いだった。

密かに欲しいと思っていたネックレスに加えて、二人のペアの分も買ってくれるとは―!
思わずバロックに抱き着いてしまったが、嫌がらずに受け止めてくれた。





「バロックさま、本当に、本当に嬉しいです……!ありがとうございます!」
「ふ、お気に召したようで」
「これ、一緒にしていましょうね!」
「あぁ、そうだな」



〜終〜
 

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