Sweet dreams-DGS

□12話
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「すみません、皆さん。今日のところはここで帰らせていただきますね」
「えー、もう帰っちゃうの……?」
「ごめんね、アイリスちゃん。でも今日はすっごく楽しかった!またこういうことやろうね」
「……うん!アイリスも楽しかった!」
「ふふ、では、デザートだけ持ち帰らせてください」





デザートはどうやらガトーショコラで、これもまた手作りのようだ。
ガトーショコラって難しいと聞いた気がするが、作ってしまうとは本当にすごい。

ケーキをアイリスから貰った袋に入れていると、リュウノスケとスサトがこちらに来た。





「あの、今日は本当にありがとうございました。また機会があれば……!」
「お二人とも、お体に気を付けてくださいまし」
「うん、ありがとうね」
「……世話になったな」
「あと……ジーナちゃん!」
「っ!?」





なぜか隅のほうでもじもじしていたジーナの元に行って、さよならの挨拶をすることにした。





「ジーナちゃんも、ありがとう。またいつでも会おうね」
「!!……うんっ、あたしも」





なぜかジーナは、とても恥ずかしそうにしており、頭を撫でただけで顔が真っ赤になっていた。
だけど、すぐに笑顔で答えてくれた。

そして、最後にホームズに挨拶しておいた。





「ホームズさん、誘ってくれてありがとうございました」
「おや、まともに礼が聞けるとはね。……こちらこそ、楽しい時間を過ごさせてもらったよ」
「…………探偵。誘ってくれたことには、感謝しなくもない」
「!」
「しかし、勝手に侵入するのはやめていただきたい。ミレイが驚く」
「……まったく、死神くんはいつも一言多いな。ま、二人ともよかったらいつでも来てくれたまえ!」
「はい!」





最後に皆に手を振って、ホームズ宅を出た。

倫敦の空はもう濃い青に染まっていて、屋敷への帰りは行きと同じく、ベーカー街まで辻馬車を呼んだ。
馬車で揺られている道中は、相当酔っているのか、はたまた疲れか、バロックはずっと目を閉じていた。
寝息は立てていないから、意識は覚醒したままなのだろうけど。

どっちにしろ、あまり邪魔しないことにした。
それに、馬車の揺れの心地よさは、静かに居るのにうってつけでもあったのだ。











***










屋敷の前まで停めてもらい、バロックの様子を見ながら馬車を降りてから、私は真っ先に玄関のベルを鳴らして、使用人の一人に来てもらった。
一応、"バロックが酔っているのでもう寝室に向かいます"と伝えておいた。

使用人が了解して礼をしたのを見て、すぐに寝室に向かった。





「バロックさまは、もう寝てください。まあ私も直に寝ますので、待っているんですよ」
「……あぁ」
「あ、あと……せめてガウンを着て寝てください。その服だと皺になります」





一つ一つの行動が気だるそうなバロックを見て、半ば呆れつつ外套を代わりに取ってあげたりだとか、ベッドメイキングもどきのことをしたりした。
そういえば、デザートを貰ってきたのだったと思い出し、急きょまたそこらの使用人を呼び止め、温度が変わらないところに保存してと頼んだ。

一通り、帰ってすぐにすべきことを終え、ネグリジェ姿に着替えると、バロックがずっとこちらを見ていたのに気づいた。





「……もう行きますからね」
「……早く来い」





珍しく、バロックが拗ねている。
こんな可愛い仕草をしたら、死神という名が台無しだなと思いながら、私もベッドに入っていった。

バロックと向かい合わせに横になると、彼が私の鎖骨辺りに顔をうずめてきた。





「今日は甘えんぼさんですね」
「……ふん」
「いつも私がされてばかりですから、する番です。ゆっくりおやすみくださいませね」
「……おやすみ」





そう言って頭を撫でてやると、私の思い込みだろうか、いつもよりも癒されているような表情で、目を閉じていた。
頭を撫でるだけでなく、抱きしめるように腕を回してやると、バロックはあっという間に眠っていた。

たまには、こういうこともいいかもしれない。
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