Sweet dreams-DGS

□12話
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「バロックさま、ちょっと待っていてくださいね。ベッド整えますから……」
「いや、待て」
「えっ?」
「ミレイはベッドに腰掛けて……」





突然バロックがそんなことを言うので、疑問しかなかったものの、従ってベッドを椅子のように、足を床につけて座った。

すると、バロックは私の太ももに頭を乗せて、そのまま体はベッドに横たわらせたのだ。
そう、私で膝枕をしたのだ。





「ひゃっ!?ば、バロックさま、あの……!」
「ん……あまり騒ぐな……」
「ちょっと、ち、近いですし……動けないですし……」
「私はここで寝たいのだ……。それに、動かなくてもよかろう……」
「えぇっ、でも……」





疲れたようにバロックは呟くと、そのまま目を閉じてしまった。
最初は天井を向いていたのだが、寝返りを打って私のお腹のほうを向いた。

決して直に触れているわけではないのに、どうもくすぐったく感じる。
服の布越しではあるが、横に向けている彼の顔の頬が、私の太ももに触れていると意識したら、体が熱くなったような気がした。





「……もう……。あ、マントをお布団代わりにしましょう」





そういえばマントを持って来ていたのを忘れていて、ベッドの脇に置かれていたマントを、バロックの肩まで掛けてあげた。
動けないのは少し辛いけど、目の前で心地よさそうに眠るバロックを見ているのは、悪いことではなかった。

かなりぐっすり眠っているようだから、頬をつついてもビクともしなかったため、しばらくの間彼で遊んでいた。
心ゆくまで頬をつつき終わると、今度は白い頬にちろりと垂れた前髪が気になり、うねっていたたところを、そっと私の人差し指に巻き付けた。

そしてその前髪から、頭の上まで指を滑らせて、食事の際にバロックが撫でてくれたように、彼の髪の毛を梳いた。





「ふふっ……なんだか面白いですね」





思わず吹き出してしまったのは、こんなに傍で己の髪の毛やらをいじられているのに、寝息を立てて気づく気配が全くないからだ。
別に滑稽とまでは言わないが、どうにも笑わずにはいられない。

そうやってバロックをいじることに陶酔していたら、突然物音がして、飛び上がりそうになった。
幸いバロックに影響はない。





「ミレイさん。どうやら驚かせちゃったかな?」
「ほ、ホームズさんでしたか……。すみません、集中していたもので……」
「お取込み中のところかもしれないが、デザートを用意するところなんだ。もう他の片づけもこっちのほうで終わらせたところでね」
「!ごめんなさい、お手伝い出来なくって……!」
「いやいや、用意してもらった分のお返しとでも思ってくれ。……死神くんの寝顔なんて、初めて見たよ」





どうやら物音は、ホームズが寝室まで訪れた際のもので、リビングからは話し声がかすかに聞こえる。
そういえばホームズに言われるまで気づかなかったが、バロックが眠っているところを見られてしまった―。





「あっ……あんまり見ないほうがよろしいかと……。嫌がりますよ?」
「そんなの秘密にしておけばいいじゃないか。しかし、この様子を見る限り、デザートはきつそうだね?」
「うーん、そうかもしれませんね。デザートお持ち帰りして、起きたら帰っちゃおうかと考えております」
「うん、構わないよ。起きた時に皆に挨拶もしておいてね」
「はい、そうさせていただきます」





言うことは言ったのか、では、と手を軽く振って寝室を出て行った。
少しバロックが呻いた気がするが、まだ起きる気配はないか。

しかしその後、まるで敵が去ったのを完全に見計らったように、ホームズが去った数分後にバロックが目覚めた。
まさか、来ていたのを知っていたのではないか。





「あら、おはようございます、バロックさま」
「……ああ……おはよう」
「バロックさま、もうお疲れのようですから、デザートだけ持ち帰って屋敷に戻りましょう?」
「……わかった。そうする」





眠たそうに目をこすっているし、おそらく気づいていないだろうな。
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