Sweet dreams-DGS

□11月11日。
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※大逆転裁判の世界観・時代にそぐわないものが出てきますが、長い目で見ていただけると嬉しいです。










「バロックさま、今日は何月何日ですか?」
「…………11月11日だが」





私は今日が何月何日かを知っている上で、加えて満面の笑みでバロックに訊ねた。
勘違いして呆れられているが、そこは今は気にしない。

彼が答えたすぐ後に、顔の真ん前にあるものを見せつけた。





「ほら、この通り。今日はポッキーなるお菓子の日でございます!」
「……もしや、その"ポッキー"なるものが、1に見えるから……程度のものだろうか」
「ええ、そうですけど」
「…………」
「これも大日本帝国のものと聞きました」





特に最後の言葉を付け足すと、私が月日を訊いたとき以上に呆れた表情を見せ、ついには額に手を当てていた。
確かに、この日本という国の発想は寧ろ感心ものだが。





「それでですね。同じく日本で話題になっていると聞いたものがあるのです」
「……」
「"ポッキーゲーム"なるものです!やってみます?」
「……やらん、と言っても聞かぬのだろう」





そのバロックの言葉にむすっとして見せると、ため息をつきながらも良いと言ってくれた。

しかしこの場合は、言い出した私からやるべきなのだろうか。
本来は彼からやるほうが、ムード的にはよいのだが。

まあいい、まずは教えるところからだ。





「じゃあ、まず私がこれ咥えますね」
「……ほう?」





一本とはいえ、咥えながら喋るのは案外難しいものだ。
聞き取れるか心配になりつつも、そのまま話す。





「これで、バロックさまも咥えてください。反対から」
「私もか」
「そうです。……それで、その……そのまま食べていって……」
「!……」





察しが良い者は、二人で咥えて食べていく、ここで気づいてしまう。
バロックもその一人で、瞼がピクリと動くのが見て取れた。

言い出してやり出したのも私だけれど、いざやろうとするととても恥ずかしい。





「……じゃあ」
「……」





部屋は元から静かだったけれど、それがもっと強調されたように感じる。
そしてじりじりと、そのお菓子を私も彼も食べていった。

食べるといっても、うさぎのように齧るようなものだった。

そして、必ず訪れる結末。
私はその寸前で目を瞑ってしまったが、唇に感じた感触はそれによって、もっと強く身に伝わった。





「…………」
「……二度楽しめる、か」
「!な、なんですか……?」
「お菓子もまあ美味いものだが……ミレイの唇の感触も感じられる」
「っ……!?」





やる前までなんだか気だるそうだったのに!
寧ろ私よりもじっくりと味わっていたではないか。

しかし、齧って僅かに唇に残った、お菓子のかすを指で取る仕草に、その怒りはすぐ引っ込んだ。





「では、もう一本だな」
「ええっ……!」
「ほら、まだその手には残っているだろう?クク」
 

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