Sweet dreams-DGS

□Trick or treat!!
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「Trick or treat……」





私は厚い革表紙の本を開き、そこに記された英文を読んだ。
その表記があるページを全て読んでみると、それはハロウィンという簡単に言えばお祭りだそうだ。

そして私が呟いたTrick or treatは、ハロウィンの際に仮装した子供たちが、他の家に訪問した際に言う言葉。
直訳すると「悪戯されるかおもてなしするか」で、訪問された家の住人は、悪戯されたら困るからお菓子をあげておもてなしするそうだ。





「ああ、だからお菓子をくれないと悪戯するぞって言うんだ……」





そういえば、もうすぐ10月31日だっけ。
その日がハロウィンらしいから、してみるのも良いかもしれない。

誰がよいかと考えることすらせず、ターゲットはすぐに決まった。
ハロウィンの記述があった本は、寝室に小さな本棚があってそこにあるため、本を持ってこっそり寝室を出た。

ソファに座っている主―バロックが、ターゲットだ。
彼しかいないとは言ってはいけない。





「…………」
「!ミレイ、先ほど帰った」
「!!あ、お、お帰りなさい……」
「ああ、ただいま」





執務室には二人しかないはずなのに、こそこそと動いているため無駄に驚いてしまった。

バロックの優しい声に翻弄されながら、足を組んで座っている彼の目の前に立った。
胸に、あの本を抱えながら。





「?どうした」
「……えっと……。と、Trick or treat……っ!!」





Trick or treatと言うだけなのに、なぜ照れるのだろうか。

すると、バロックは抱えていた本を私から奪った。
そして、ついさっきまで読んでいたため、開きやすくなったページを開いた。






「……ハロウィン……」
「そ、そう、なんです。ちょうど今頃……」
「この記述によれば、私がお菓子をあげなければそなたが悪戯することになる」
「っ、た、たぶん……」





本を閉じ脇に放り投げると、組んだ足に加えて腕を組み、口端をあげた。
なぜこんなにやにやしてるのか。
悪戯されるほうなのに……。





「ミレイがしてくれるなら……如何なる悪戯も受けて立とう」
「な……!よ、よろしいのですか……!」
「そう書いてあるのだ。ほら、やってみろ」





悪戯されるほうなのに、バロックの目が見下している目だ。
これは伝統に乗っ取り、悪戯するべきなのだろうか。

しかし、何をすればいいのだろう。
なぜか試すような視線を感じるし。





「うう……出来ませんよお……悪戯なんて」
「くく……そうだと思った」
「なっ」
「本来とは違うが……仕返しと行こうか」
「え、きゃっ」





腕を引かれ、ソファに押し倒されてしまった。
心のどこかできっと悪戯されるのは私のほうだと、思ってしまったせいか。

それにしても、簡単な彫刻が施されている天井とバロックしか見えないというのは、なんと嬉しい視界だ……と思ってみたり。





「何笑っている」
「あ、顔に出てましたか……?」
「まあいい。……どこからがよいか……?」
「どこって……!……もう、私は悪戯されるほうなので、バロックさんが決めてください……」
「ほう、では喜んで……」





どこからするかは、バロックの気持ち次第。

最初は何だったか、来年のハロウィンまで秘密にしておこうか―。



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