Sweet dreams-DGS

□11話
1ページ/5ページ

「あ、あ、10年前から、愛して……って、」
「さあ……もう寝ろ」
「寝ろって……!眠れるわけないじゃないですか……!」
「ならもう一度言ってやろうか?……愛してる」
「っ……!!」





当然だが、その夜はぐっすり眠れたとは到底言えなかった。
時たま意識を飛ばし、眠れたかと思えばほんの少ししか経っていなかったり。

そういえば、以前にも似たようなことがあった。

―それはもうほぼ10年前と言える日まで遡り、まだ私とバロックが出会って数週間の頃だった。


まだ私は、バロックがどういう人で、どういう時に、どういうことを言い、どういう行動をするのか。
それを手探りに勉強していた頃。
必要最低限の会話はするのだがが、まだ距離感がある。

私はそれを申し訳なく思いつつ、少し警戒心を纏い、それ故どうしたらいいかわからず、迷っていた。





『……私は、もう寝るが。いいのか、またそこで』
『…………』
『……まだ成長する真っ只中なのだ。ソファに居続けるのはよくない……とにかく、来い』





二人一緒にベッドに入るということに、抵抗を持っていた。
決心がつく前は、同じベッドだけれども、布団が一人に一枚で、お互いに背を向けていたような状態だった。

しぶしぶベッドに入り、布団を掛けてもらったら、体を丸めてせめて不安を凌ごう―
と思っていたら、突然バロックに抱きしめられた。
まだ12歳だった私には、衝撃が大きすぎた。





『あ…………』
『……不安なのはいつも見ている。……だから、せめて……』
『っ…………』





その日私は、一晩中泣いた。
眠ることもせず、泣き続けた。

これがあったから、今私はバロックとの間に何があっても、抱きしめ合って眠っている。
きっと12歳の頃に受け入れられたのも、たったそれだけで警戒心が解けたのだ。










***










次の日、オールドベイリーにいつも通り向かい、執務室に行くと奴……いや、その人はいた。





「……はあ。またですか」
「なんだい!ため息つかれるようになったじゃないか!」
「……私はノーコメントだ」
「あ、バロックさま逃げた……」





なぜ朝っぱらから、ホームズの姿を見なければならないのか。
以前にも似たようなことがあったが、さすがに昨日のことがあるため油断はしていない。

ちなみに、バロックは手をつけることすら面倒なようで、ソファでふてくされていた。





「ホームズさん?ご用件を早く」
「ううん、手厳しくなったね」
「もうっ!あんなことするからです!」
「ごめんごめん、昨日のことは謝るよ。それでね、ミレイさん。貴方この前日本人に会ってませんか」
「!まあ、よくわかりましたね」





その日本人というのは、バロックが担当していたとある裁判が終わった後、そこで火災が起きた時に出会ったあの二人だ。
ミスター・リュウノスケと、ミス・スサト。

あの二人、ホームズと知り合いにでもなったのだろうか?





「貴方もよく、二人の日本人はわかると思うけど……その二人が、僕のあの家に事務所を構えることになったんだ」
「ええっ!そんなことがあったのですね」
「僕の家にある屋根裏部屋に泊まりながら、というわけさ。だからね、ミレイさんだけでも、死神くんとでもいい。挨拶だけでもどうかなと思ってね」
「まあ、どうしましょう……バロックさま」





ソファに座っていたバロックのほうを振り返り、問いかけてみる。
当然だが全て聞いていたようで、立ち上がって私の近くに立った。





「……仕方ない。ミレイを一人で行かせるわけにはいかないからな。……で、いつだ」
「今日も裁判があるのかい?」
「……まあな」
「なら、夕方ということにしておいて、そちらが来た時間によって対応するよ。それで構わないね?ミレイさんも」
「はい」
「では、これで失礼するよ!」





そう言って、普通に扉から去っていった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ