Sweet dreams-DGS

□9話
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次の日の朝、バロックはとある事件の裁判があるため、オールドベイリーに着くなり、少しだけ執務室で準備をしてからすぐ去っていった。
でも裁判がある日はいつもこうなので、慣れてしまっている。

そして、裁判にもよるが長く執務室を空けるため、執務室への来訪者や、電報、手紙などの対応は私が代わりに請け負っている。
と言っても、ほとんどがバロックが片づけなければならないので、要件を簡単にまとめて紙に留めておくだけだ。
それをうまく伝えるのも、私の務めである。

だからなるべく執務室にいて、時たま外出する程度で裁判の日は過ごしている。

そして、たまたまオールドベイリー内を歩いていた時だ。





「あら?あのお二方は……」





たった二人だけ、大英帝国のではない服装をしている一行がいた。
その服装を全身見て、一つ思い浮かんだ言葉―具体的に言えば、"国の名前"があった。





「すみません、お二人さん」
「あ、あ、あの……な、なんでしょうか……!?」
「もしかして、日本人でいらっしゃいますか?」
「はい、そうでございます」





前に、たまたま美術館に寄った時に日本について展示がされており、バロックからも英国のことを学ぼうと留学生が訪れる、と聞いていた。
だから、実際にお目にかかれて嬉しかったのだ。

一人は女性でピンクの見慣れない服を着ており、もう一人は男性で全身黒の服を着ていた。





「ああ、嬉しいですわ!日本人にお会いできるなんて」
「い、いいえ!……こちらこそ、英国の方にお目にかかれるとは……!」
「ふふ、謙虚なのですね。あの、お名前を教えていただけますか?」
「はい!わたくし、御琴羽寿沙都と申します」
「スサト・ミコトバ……」





日本の言葉を、そして日本らしい名前を、まだ慣れない口で呟く。
違う土地の者との邂逅が、奇妙ながらも素晴らしくて、思わず感嘆の声を漏らす。

すると、黒い服の男性が遠慮気味に声を上げた。





「あ、あの、ぼ、僕は……成歩堂龍之介ですッ!!」
「リュウノスケ・ナルホドー、ですね」
「はい……!」
「私は、ミレイ・シュヴェルツです」
「うう、英語は難しいや……」





ミスター・リュウノスケが言うと、ミス・スサトと私が同時に笑った。
それが恥ずかしかったのか、おろおろと慌てていたので、思わず可愛いなぁと思ってしまった。





「ねえ、お二人はおいくつなの?」
「私は16歳です」
「僕は、23歳です」





私はミスター・ナルホドーの言葉を聞いて、とても驚いた。





「まあ!ミスター・ナルホドーは、私より1歳上ですのね!」
「ええっ!そうなんですか!?」
「私も驚きました……ミレイ様はもっと上かと」
「ふふっ」





スサトはまだ10代らしいが、いつも落ち着いていて大人っぽく、寧ろ私が見習うほどだ。
するとリュウノスケが訊ねてきた。





「そういえば、ミレイさんは何をされている方なのですか?なぜオールドベイリーに……」
「ああ……わかるでしょうか?"死神"と呼ばれているお方を……」
「あ、ああっ……!!ま、まさか……」
「あら、知っていますの?」





まだ名前を口に出していないものの、二人に明らかな動揺が覗いた。
その時頭がいつもよりも早く回転し、一つの仮定が浮かんだ。

しかし、それは二人から真っ先に出てきた。





「バロック・バンジークス検事……実は、先ほど法廷で戦ったばかりなんですよ」
「そうだったの!じゃあ、貴方たちが弁護士でしたのね?」
「はい。私は、法務助士として同行いたしました」
「それじゃあ、結果は……」
「それが、ミレイさん……」





リュウノスケが説明をしようとした瞬間、遠くから騒ぎ声がした。
"火が出ている!"、"中に人が……!"と。
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