Sweet dreams-DGS

□7話
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「改めて訊くが。用はなんだ?」
「そのことなんだけどね。……申し訳ないのですが、ミレイさん。少しでいい、バンジークス検事と二人きりで話をしたいのです」
「はあ……?では、私は一度この場を立ち退けばよろしいのですね?」
「ああ、そこまでかしこまらなくていいですよ。そうですね、貴方特製の紅茶を淹れていただきたい」
「!かしこまりました!失礼いたします」





別に、ホームズの言ったことに何の感情は持たなかった。
不愉快さも、ちょっとした憎しみも。

きっと少し長居をするだろうから、キッチンでのんびりと紅茶を淹れることにした。
いつもは時間に追われるバロックに合わせていて、ゆっくり休もうということが少ないため、いつも通りの過程を済ませるだけであった。
だが今回は、そこをじっくり丁寧にやろうと意気込むのだった。


―いっぽう、ミレイがキッチンへ立ち退いた後のバロックとホームズは。





「……ではまた、昨日みたいにするとしようか」
「全く、わざわざミレイを去らせてまで」
「だから、彼女がいたのはたまたまだったのさ。それに彼女にはデリケートな話だからね」
「…………昨日のことか」





まあ、どう考えても昨日のことに相違ないだろう。
もしそれ以外のことならば、ミレイがいても大丈夫なはずだからだ。





「で、訊かれることは一つしかなかろう」
「もちろん。進歩は、どうだい?」
「…………どう答えてほしい」
「どこまで行ったんだ?」
「……貴様が言ったところまでだ。そこまで行ったら彼女も怖がるであろう」





言葉にして出さないが、合言葉のように二人の間では何のことを指すか、分かっている。

するとホームズは、突然にやにやし始めた。
正直言うと気持ちが悪い。





「……不気味だぞ、名探偵」
「いやあ、うぶなんだねえ」
「ふん、家族も同然だったのだ。そんな誰しも恋に発展するとは思うな」
「発展はしてるだろ?」
「…………」





名探偵、シャーロック・ホームズと会って一晩経った今日だが、無神経なのは彼の根源のようだ。
相変わらず苛立つ。





「そもそも、関係が進むたび報告せねばならないのか」
「気になるじゃないか。オールドベイリーの死神様に、愛する人が出来たっていうなら」
「あまり噂を広められると困るのだが」
「安心して、まだだから」
「……広めるつもりだな貴様」





もうバレたというなら仕方のないことだが、第三者の口で噂によって広められるのは、検事としてまともに立てる気がしない。
特に噂を広めたのがホームズとなると特に。





「とにかく。私もそこまで暇ではない。私よりも、ミレイやカヤ弁護士に聞くがよかろう」
「そうか!そうさせてもらうよ。まあ、噂を広めるのはミレイさんなら嫌がりそうだ」
「その前に私から禁止令を出す」
「ははは、それだけだよ!で……バンジークス検事。君にだけ、もう一つ話しておきたいことがあるのだよ」





切り替えが早いことに、急に真剣な顔になったホームズは、両手の指を組んで、声色も真剣に話し始めた。

さっきの抜けた感じはどこへ行ったのやら。本当に、真面目な事柄であった。





「……と、言う訳だ。その"場所"についてはミレイさんに話すけど、それ以外は全て終わるまで、秘密にしてもらえるかい」
「…………仕方ない。別に、貸しが出来たなどとどうでもいいことは考えなくてよいぞ」
「わかったわかった。……さて、そろそろ彼女が可哀想になってきた。どうだ死神クン、仲良く三人で愛人のお茶でも飲もうじゃないか」
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