Sweet dreams-DGS

□7話
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次の日の朝。
倫敦の寒い空気に触れても、まだ寝起きの状態に慣れないまま、ソファに座って欠伸をし、目をこすっていた。

すると―。





「……きゃああああああっ!?」
「どうした!?」





執務室への入り口に、いたのだ。何かが。

それに驚きすぎてソファから落ちてしまい、はしたないと思いながらパッチリ覚めた目で、バロックが外から駆け付けて来たのを見た。
私は彼に手を貸してもらって立ち上がり、死ぬかと思ったほど驚かされた元凶をまた見る。





「……」
「…………名探偵よ、なぜ貴様がここにいる」
「……」





そう、執務室の扉を勝手に開けて、壁にへばりついていたのはあの、前見かけた茶色の人だった。
バロックは"名探偵"と呼んでいたが、こんな変な人の知り合いはいただろうか。

それよりも、その名探偵とやらはバロックが呼んでも、壁から離れようとしない。





「……名探偵!」
「はっ!…………やあ、昨日ぶりだねバンジークス検事。そちらはミレイさんだね?」
「え……は、はい?」





名探偵はやっと離れたというより、今まで気づいていなかったようだ。
そしてちゃんと地に足つけて名探偵が立つと、バロックに腰を引かれ抱きしめられた。

まるで守られているようだ―。
そんな危険人物なのか?





「起きたのなら早く言ってくれよ」
「……さっき言ったのだが」
「そうだっけ?」
「…………」
「まあいいや。ミレイさん、申し遅れました。ボクはあの!シャーロック・ホームズです。実は昨日……探していましてね」





その名探偵は、手を宙で回しながら高めのお辞儀をした。

それにしても、シャーロック・ホームズ……?





「あの、出身はベイカー街の221B……?」
「そう!」
「そして、同居人にワトソン先生が……?」
「そう!……よくご存じだ、当たり前だがね」





ホームズはバロックを見て言い放った。
私は少なからずは、ホームズのことを知っている。

ストランドマガジン。
暇つぶしには最適の娯楽雑誌だ。

バロックが知らないのは仕方がないだろう。





「で、名探偵。今日は何の用だ」
「今日はね君に会いたかったんだ。バンジークス検事。だけど今日はラッキー、ミレイさんにも会えた」
「……?」
「昨日はミレイさんの足跡と匂」
「その話はいい」





今匂いと言おうとしただろうか。
バロックが止めたおかげでもっと怪しくなったが、昨日カヤとカフェに行った時にすれ違ったかもしれない。

……そういえば。





―『そういえば……全く関係ない話だけど。さっき私の周りでコソコソしてる人がいて……』

―『バンジークス検事さまの執務室に向かう道中……ほとんどいたの。けど、付きまとってたわけじゃないし何も言わなかったけど』





カヤの言っていた情報と、この目の前の茶色い人物。

ピッタリとピントが合ったようだ。





「……昨日、会ったというか見たようですね。……友達が」
「えっ、そうなのかい」
「まあ仕方ない。名探偵は今日までミレイの姿を知らなかったのだ」
「はあ……。改めて、ミレイ・シュヴェルツと申します」





今度はバロックとは密接したまま、拘束を解いてもらいお辞儀をした。

ホームズは帽子を深く被り目を隠しながら、こちらこそと挨拶をしたのだった。
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