Sweet dreams-DGS

□6話
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「ねミレイ、どうなのよ」
「ちょっと待って、そんな一気に……」





私は絶賛、カヤから質問攻め……いや、私がバロックのことをどう思っているかなかなか言わないので、一方的に攻め立てられているところだ。

カヤはもう椅子に座ることを忘れて、机に手をついて私へと詰め寄ってくる。
服のドレスについたレースが、コーヒーで濡れてしまいそうなのも厭わない。





「なんでそんな聞きたいの……!!」
「何言ってるの、これ聞くために来たのよ」
「えええ……裁判の話じゃ」
「ほら、好きなの?」





バロックの、ことか―。

もし私が日々バロックと過ごしていることについて、赤の他人に語ったとしたら。
それはまさに、うぶな恋人同士みたいなものに見える。

けれど実情は、抱き着いたり寂しいと言うことが、彼に対する好意でやっているとは断言できない。
だがしかし、抱きしめられたりエスコートされた時に胸がときめくのは、違うと言っても無意味だろう。





「……どうして、一緒に過ごしてるんだろう」
「……もう、私に訊かないでよ」
「だって…………」





私が答えられずに濁していると、カヤは音を立てず素早く椅子に座った。
さっきよりは落ち着いたようだ。





「……仕方ないなぁ。法廷でバンジークス検事さまと戦ってるとき、いつも思うよ。あ、戦った後かな」
「……」
「好きかどうかは知らないけど、ミレイのこと大切なんだなーって。愛に溢れてるんだ。家族みたいに」
「……分かるの?」
「めったに自分の事話さないけど、よくミレイの近況報告を聞くの。細かいとこまで見てるんだなって」





たとえばどこと問うてみると、ちょっと調子が悪そうだなと表情で判断した時、ワインを入れる手が青白く小刻みに震えていたりとか―、
お菓子を食べるときに一口が小さいくせに、口端や指にかすが付いているとか。

ほぼストーカー並のことを聞かされるのであった。





「うう……恥ずかしいなあ、探偵さんみたい」
「……探偵ねえ。それはいいとして、そろそろミレイから動いて良いと思うの」
「……動くって?」
「よく貴方たちハグはするみたいだけど。……ここよ、ここ」





カヤが細く長い指で指したのは、己の唇だった。
……と思いきや、間接キスをするようにその指を私の唇へと移す。

案の定顔に一気に血流が集まり出す。





「ふふ、成熟する流れを一気に見てるみたいね」
「…………なにそれ……」
「分かるでしょ?口で言うの恥ずかしい」
「指でやったくせに……」
「よし、私からの指令だ!」





今度は両腕を腰に当てて、それ見ろと自信満々な笑みを浮かべた。

なんだろう、この女軍曹みたいなのは。





「バンジークス検事さまと距離が近づいたら、私に報告するべし!」
「……な……」
「ちなみに、期限は明日までよ」





そしてカヤはウインクしたのだが、その目から、星が散った幻覚を見た気がした。
ああ私、疲れているのかしら。

コーヒーの深い闇を飲み干す時間は遅くとも、それが尽きた頃には全てを話し終えていた。
しかし帰りの道中は、大好きなバロックの元に戻れるのに、複雑な心境だったのだ。
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