Sweet dreams-DGS

□5話
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「カヤ……!よかった……!!」
「直に来るであろう。……ちゃんと迎えてやるんだぞ」
「!はいっ」





電報では単調に見えるけど、ちゃんとカヤの思いは伝わっている。
待っててあげるんだ、その喜びを分かち合うために。

すると、やや急ぎめなノックが聞こえた。
バロックに優しく後ろから肩を押され、走って扉へ向かった。





「ミレイっ!!」
「カヤ……!わっ」





扉を開けてやるとカヤが飛びついてきて、思わず倒れて床に背がくっついた。

そんなことは気にせず、彼女は私に馬乗りの状態で興奮したように話した。





「ちゃんと真犯人が見つかって、私に被害がかけられることはなくなったわ!ああ、もう嬉しい……」
「私も安心した!けど……どいてもらえないかな……」
「あっ、ごめんなさい!」





カヤは本当に驚いたような顔をして、私の上から飛び退いた。
無意識にやってしまったのか、怒れないのが現状である。

すると、彼女は前の時のようにソファにいるバロックに向かって話しかけた。





「バンジークス検事さま。……お気遣い、感謝いたしますわ」
「……なに。ただ正当に、"いじった"だけのこと」
「……あら、ミレイにはまだ……?」





何の話だろう。
いや、内容に心当たりがないだけで、ヴォルテックス卿と話をしに行った時のことだとは分かる。

私が首を傾げると、カヤも不思議そうに首を傾げたがすぐ向き直った。





「そうですか。……あの、少しミレイを借りても構わないでしょうか」
「……私は構わないが。全て彼女の判断に委ねる」
「えっ」
「ね、話したいことがいくつかあるの。そこらへんのカフェまで」
「……うん、いいよ!」





なぜか分からないが、笑顔で頷けば頭を撫でられた。
まるで躾けられてるようだ……。

それはいいとして。
特に持っていくものはないので、バロックに一礼をしてからカヤについて行くことにした。





「ねえ、バロックさまは……何をしてくれたの?」
「ん?……そうねえ。あとでゆっくり話したいけど、簡単に言えば私に有利な証拠を出してくれたの」
「!!だから、ヴォルテックス卿に……」
「へえ、ヴォルテックス首席判事様に……。おかげで助かったって言っても、過言ではないわ」





まさか、そんなことが出来るとは―。
バロックの力であれヴォルテックスの力であれ……、ある意味裁判を動かしたのだ。
そのおかげでカヤはここにいる。





「そういえば……全く関係ない話だけど。さっき私の周りでコソコソしてる人がいて……」
「はあ……?」
「バンジークス検事さまの執務室に向かう道中……ほとんどいたの。けど、付きまとってたわけじゃないし何も言わなかったけど」
「……変な人もいるのね……」
「まあ気にしなくていいわ。どうせ執務室に行ってもバンジークス検事さまがいるし」





オールドベイリーから出るまで、カヤの裁判についてや、彼女が話したいと言ったことは話さず、
彼女の"そういえば"に答えるような会話をしていた。

私より少しは長く生きているのもあるからか、彼女の話すことは奇想天外でとても面白い。
だからさっき言っていた"変な人"の存在は、頭の隅に退かされ……いつの間にか消えていた。
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