Sweet dreams-DGS

□4話
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「…………。バロックさま、お聞きになってたでしょうか」
「……もちろん」
「……あの、まさか、ですけど……。カヤに疑いがかかることは、ありませんわよね……?」
「……」





バロックはその変わることのない表情と、目を斜め下に向けながら、静かに答えた。





「……たとえ、やっていないとしても。降りかかることはある」
「!……」
「これはもう。大英帝国が誇る裁判長、弁護士、検事、陪審員の腕と……カヤ弁護士を信じるしかあるまい」
「……ずっと、そう思っているのです。私たちには、信じることしか出来ないと……」





今更ながら、バロックにワイン―大好きな聖杯をあげていないことに気づきながら、倒れ込むようにソファに座る。

すると、自分の頭がバロックの胸に押し付けられた。
片腕だけであっても、抱きしめてくれているのだと感じ取る。

そのぬくもりは、事件を見てしまった時と同じだ。





「ミレイ、ワインをゆっくり……入れておいてくれるか」
「!!」
「少し……ヴォルテックス卿に話をしてくる」
「あ、あの、何を……」





私が尋ねる前に、バロックは立ち上がってもう執務室の扉を開けていた。

彼の掌が触れた肩に手を置き、物思いにふけってから―。
彼を待つ間聖杯にワインを傾けつつ、紅茶を入れていた。










***










―過去、もう数年前のことだ。





「あら、このオールドベイリーでこんな小さい子を見かけるとは。おいくつ?」
「あ……14歳です……」
「!14歳!ふふ、そこまで小さくないわね。私はカヤ。ここで、弁護士をやってるのよ」
「……カヤ、さん」
「ちなみに、20歳。6歳差ね」





初めてカヤに出会ったのは、8年前。
実は彼女とは6歳差なのだ。

その時は、バロックについて行って法廷に来ており、そこで出会ったのだ。





「それで、なぜここにいるの?」
「あ……。えっと、バロック・バンジークス検事……」
「!!バンジークス検事さまね、その方が?」





弁護士だからか、カヤはバロックに敬意を持っているようだった。

私は住む場所がなく……いや、元に戻る場所をなくして、バロックと共に住んでいることを教えた。
すると、ずっとカヤは口が開いたまま固まっていた。

そりゃ、そうか。





「あ…………。そう、だったの……」
「えっと……大丈夫、ですか……?」
「ううん、大丈夫よ。これからずっと、そう暮らしていくの?」
「……たぶん」
「じゃあ!私とお友達にならない?」





両手を掴まれ、顔より上まで上げられた。
カヤの目は輝いており、たとえそれが偽りのものだったとしても―。

私はそこに希望を見出したのだ。





「い、良いんですか……!?」
「もちろんよ!あ、そうだ。名前聞いてないわ……」
「ミレイ・シュヴェルツです」
「ミレイちゃんね。あと、貴方にとったら私はお姉さんだけど。普通に敬語じゃなくて良いの。お友達だからね」





ハッキリと言ってくれるのはカヤの魅力であり、その後のウインクは何とも言えない説得力があった。

これが、今の大切な友達となっている彼女の出会いだ。
その後一度バロックのところに戻ってから、再度彼女と会って話をしたのだ。


だがその話は、またいつか―。
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