Sweet dreams-DGS

□4話
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首を傾げながら、重たく大きい扉を開けると、そこには―。





「!!カヤ……!!!」
「ごきげんよう、ミレイ。突然押しかけてごめんね」





なんと、執務室に訪れたのは、私の唯一の友達と言っても過言ではない、カヤだ。

彼女はさっぱりした性格で、被告人にかける信頼はその性格故か、不利な裁判でも揺らぐことはない。
だからこそ、被告人だけではなくオールドベイリー側からの信頼も厚いんだとか。
その証に、オレンジ色に裾が黒のレースのドレスの、その左胸に弁護士バッジがきらめいていた。





「バンジークス検事さまも……申し訳ありませんわ」
「いや。ご無沙汰している」





やはり弁護士と検事の関係だ、なんともいえない間柄だ。
執務室に入らず、扉の前に立っているカヤと、部屋の奥のソファに座っているバロックとの遠い差ですら、分かるほどだ。

それよりまずは、何の用か尋ねなくては。





「それで、カヤ……どうしたの?」
「ああ、あのね……。知っているかしら、数時間前あたり……事件があったでしょう」
「!雑貨屋で、銃殺……。もしかして、弁護を?」
「ううん、弁護じゃなくて……。実は、その。証人として、召喚されることになったの」
「え、ええっ!!」





まさか、あの現場に彼女がいたのか!?

それにしても、初めて聞いた。
弁護士が証人として立つなんて……。





「じゃ、じゃあ、あの現場にいたの……?」
「!ミレイも……?」
「うん。バロックさまと、少しお出かけをしていたの。……そこで、たまたま……」
「そうだったの……。……衝撃的、よね」





その現場にいた時よりは和らいだものの、あの場面を思い出して少し気分が下がった。

カヤも察して、あまり言及しない。





「それで、あの時はどこら辺にいたの?目撃したって……」
「ああ、あそこ雑貨屋でしょ。店の中にいたの。そうしたらね……」





すると顔が俯き加減になり、目撃したことを語り出した。

―個人的な買い物で、現場の雑貨屋に訪れていたのだが、突然銃声が響き渡った。
音が店外からしたため、振り向くと雑貨屋のショーウィンドウに血しぶきが飛び散っていて、そこにもたれるようにして男性が倒れていた。

犯人らしき人物は見つからず、銃を持っていたり逃げたりした姿は一切無かった。





「普通に街中で銃声がしたものだから、すぐ人が集まってきてね。その店の店長が通報してくれて、ヤードの人たちが来たの」
「目撃者は、カヤだけなの……?」
「店の中は私しかいなかったわ。店長は店の奥……隣接してる裏の倉庫にいたみたいだから」
「……ありがとう、辛いのに聞かせてくれて」
「いいえ、構わないわ。……ただ伝えたかっただけ」





カヤはそう言うと、悲しげに目を細めた。
その表情に胸が辛くなる。





「ここにいて大丈夫……?その……」
「ああ、まあ……ね。すぐ戻るわ」
「……せめて、被害がかからなくてよかった」
「ええ。……じゃあ、もう行くわ。バンジークス検事さま、失礼いたします」





ドレスの裾をつまみ、たくし上げて礼をした。
そして私には、ウインクをして執務室を去って行った。

彼女は、オールドベイリーに来て数年後に知り合った。
帰る場所がバロックの元しかない私にとって、彼女の存在は友達以上の価値があった。

この事件での裁判は、残念ながら関係が薄い。
ただ無事に裁判が終わることだけを、祈ることしか出来ないのだった。
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