Sweet dreams-DGS

□2話
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「ん…………ん?ここは……」
「家だ。ミレイが思ったより、深く眠るものだからな……」
「あ、も、申し訳ありません……!もしや、運んでくださったのですか……!?」
「まあ、そう難しいことではなかったがな」





私は仕事終わりのバロックとアフタヌーンティーをした後、いつも通り眠ってしまい、特に意味はないが心地よい夢を見ていた。
それが案外気持ちの良いもので、もう夜近くまで眠りこけてしまったのだ。

目が覚めたのはバロックの家の寝室で、二人で共用しているベッドに寝かされていた。
もう夜ご飯には遅い時間かと置時計を見ようとしたら、ドアの隙間からシチューの匂いが漂っていて、希望が見えてきた。





「では、私は先に食卓へついておく。ゆっくり来たまえ」
「ええ、ありがとうございます」





バロックの家は大きくとも小さくともないが、家というよりも広すぎない屋敷、という表現がピッタリだった。
あまりにも広すぎると、寂しいとも思うし。

寝室は2階にあるのだが、寝室を出て右に曲がり、一つ部屋を過ぎつき当たりを左に曲がってまた行くと、とても横幅が大きな階段があるのだ。
階段を下りた先にはワインレッドのカーペットが敷いてあり、そのカーペットは家の玄関へと一直線に続いている。

カーペットや1階のことは一度隅に置いて、その大きな階段を下りずに真っ直ぐ進み、つき当たりを左に曲がってすぐ右側の部屋が、食事をする部屋だ。
ほぼ左右対称のような構造なので、1階も似たような構造である。
食事をする部屋の扉が開け放たれていたため、シチューの匂いがここまで届いたのだろう。





「お待たせいたしました」
「ああ」





部屋の真ん中に長机が置かれていて、バロックは扉に一番近いところに座っており、私は迷わず彼の隣に座った。
私が席に着くなり、すぐにいただきますと使用人も含めて全員で食事を始めた。

食事中は特に話したいことがなければ、無言で食べるということがしょっちゅうだった。
食べ終われば使用人が片づけてくれるし、その後も少し休憩してしまえばすぐお風呂に入ってしまう。
会話は少ないが、これでも私はこの暮らしが一番好きなのだ。





「お風呂、私かバロックさまどちらが先にしますか?」
「ミレイが先でいいぞ。特に私も急ぐ理由はないしな」
「では、お先に入らせていただきますね!」





階段の踊り場で話をしてから、バロックは寝室の隣の自室へ、私はお風呂場へ向かうことにした。
お風呂場は階段すぐの右の脇にあり、玄関から見ると正面、左の壁の扉にある。

玄関を入った先にお風呂場があるのは恥ずかしいとは思うが、そもそもお風呂は頻繁に入らないため、気にすることではないし慣れてしまった。
扉を開けるとすぐ脱衣所が目の前に広がっていて、他の部屋よりも常に明るく、クリーム色の壁が優しい雰囲気を演出している。
すると、脱衣所には先客がいた。





「あ……ミレイ様、私も入らせていただきます」
「ああ、そこまで畏まらなくてもいいですよ。一緒に入りましょう!」





その先客とはこの屋敷に雇っているメイドの一人で、私と年齢が近かった覚えがある。
メイドという立場を意識しているせいか、どうも畏まってしまうのだが、私はそういうのは苦手なのだ。

でもお風呂の温かく包み込むようなお湯に浸かれば、その堅さだってすぐに融けた。
彼女も、好意的な態度で話したら、溜まっていた疲れもとれたようだった。





「ありがとう、ございました……ミレイ様。普段何気なく入っているお風呂が、とても癒されたように感じました」
「そう思っていただけたなら、私も嬉しいです。気兼ねなく話していただいて良いんですよ」
「はい……また、ご一緒しましょう」
「ええ」





私と会話を終えたメイドは、早急に風呂場を去った。
さて、私も寝室に向かおうか。










***
お風呂についての描写ですが、昔はあまりお風呂に入ることがなかったそうなのです。
入るとしても月1とか。

まあこの話では、その月1だと思ってください。(笑)
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