Sweet dreams-DGS

□1話
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※このページだけ、ほんの少しグロテスクな表現があります。
規制するほどでもありませんが、そういうのが苦手な人は注意してください。











「っ……はぁっ…………」





倫敦は既に、日付が変わった深夜だった。
月の光だけが、この一室に差し込む明かりだ。

そしてその月光が、少女の白い肌を刺そうとする短剣の刃に映る。
その鋭利な刃だけでなく、その反射した月光までもが自分を刺すのかと、少女は震えていた。

そして、いや、いや―と目の前の短剣を持つ男にせびる。
男の目は慈悲などなかった。一言でいえば、闇。





「はぁ、はぁ……あの」
「……」
「私は……死んで、しまうのですか……」





目の前の男は、予想外なことを言ったのか、少女の発言に目を見開いた。
頭によぎるのは、なぜ子供というものはこんなにけなげなのかということ。

この少女は突然男の前に現れ、男も男で少女を迷わず受け入れた。
少女といっても10代という感じだったが、まだまだ男から見たら幼かった。
今は会って数年というほどだが、男はあることを少女に言った。





―「ここにいる限り、しばらくは私に従ってくれるか。もしかしたら一生になるかもしれん」





そう、今この時でも少女は男の言ったことを守り続けている。
たとえ男に殺す気が一切無かろうと、男がしようとすることに全て従う気だ。

確かにそれは以前約束したことだ、だが―。
少女は自分の命より、男への忠誠に尽くしているのだ。





「……?違うのですか……?」
「……全く、子供とは困った生き物だ……」
「?」





男はため息をついて、その短剣を少女の鎖骨の間に向けた。
心臓を狙っているのではないと分かり、少女は少しばかり安堵した。





「これは、また違う約束だ」
「……はい」





そしてその刃を、浅く皮膚に刺した。
少女は痛みに唸る。
男は刃を下に動かし、縦の直線を皮膚に描いた。

一度刃を皮膚から離して、また違うところに刺し、今度は横に動かす。
少女は叫びたいはずなのに、精一杯声を抑えている。
それが分かるほど、彼女は力んでいた。





「……」
「っ……!!」
「……それほどまでに、私が好きか」
「はぁっ……!!はあ、はあ、はい……」





男に答えを返してから、すぐに少女は男の胸元に倒れこんでしまった。

少女の鎖骨の間には、短剣で描かれた十字架。
その意味を知るのは、男―バロック・バンジークスだけだった。





「……ミレイ……」
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