Sweet dreams-DGS
□天使がいつも見守っている
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「ミレイさん。今から少し仕事をするので……危ないですから私室にいてくださいね」
「はい!わかりました。ドレッバーさんも、あまり集中しすぎてそのまま寝落ちしないでくださいね?一緒に寝るんですから」
「ええ、気を付けます」
ある日の夜のこと。夜ご飯を終えた後のゆったりとした時間に、久しぶりにドレッバーが仕事で工房に籠ることになった。
たぶんまた発明品か何かの設計を任されたのだろう。
それでいつも危険な工具を扱うから、仕事中は私を絶対に工房に入れさせないようにしているのだ。
ドレッバーが仕事を終えるまで、紅茶を淹れて本棚に並んでいる本を一冊手に取りこの静かな時間を過ごすことにした。
***
ドレッバーは工房と私室を繋ぐ扉を閉めると、
左手に金色のガントレットを着け、様々な工具が入った箱を自分が設計した試作品の近くまで持って来た。
そして棚の奥にひっそりと息を潜めるように仕舞われてある、錠のついた木箱を取り出した。
その錠を外すための鍵を服のポケットから取り出し、錠を外す。
木箱には、木製の写真立てに入れられたある人物の写真があった。
「……ミレイ……」
優し気に、写真に収められた人物の名を呟く。
その写真には、ミレイがとても幸せそうに眠っている姿が収められていた。
ドレッバーはふと彼女とのこんな会話を思い出した。
『ドレッバーさん、あの鍵がかかった箱は何ですか?』
『……秘密です。オレだけの大事な、ね』
『?』
もちろん誰にも知られないようにわざわざ鍵付きの箱に仕舞ってあるのだが、ミレイに秘密にしているのにはもう一つ理由があった。
特に本人に直接言えない理由が。
それは今日のように工房で仕事をしていた時、ついうっかり集中してしまい気づけば寝る時間をとっくに過ぎていたことがあった。
焦って真っ先にミレイの様子を見に行くと、本を抱えながらベッドですやすやと眠っていた。
その姿があまりにも幸せそうで、そして愛おしくて仕方がなかった。
だから決断を迷うことすらせず、すぐに写真機でその姿を写真に収めたのだ。
今ちゃんと考えれば寝姿を盗撮するなんて不埒極まりない行為だったため、墓場まで持って行こうと決めたのだった。
「今日は待たせないから……ミレイは、そのままで……」
この写真を撮ってからというもの、工房で仕事をする際には必ず見えるところに飾るようにしているのだ。
天使のように眠り、そして写真として佇むミレイが見守ってくれていれば、
己が間違った道を進まずに済む。
そう、思えるのだ。
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