Sweet dreams-DGS

□友情の花にも刺あり
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「そ……そ……そこのレディは何なんだああああああッ!!」
「一旦黙れ」
「ちょっと、大親友に向かってそれはないだろぉ……そう思いません?レディ」
「え、まあ、そうですよね……あはは」





断末魔にも似た叫び声がさっきから止まらないのは、ベンジャミン・ドビンボー。
そして私も驚きなのだが、そのドビンボーと大学時代からの友人だというバロック。

バロック曰く緊急でドビンボーを独逸に帰さなければならないようだが、私を見た途端ドビンボーが止まらなくなった。





「い、い、いつの間にィィィ……!ああああ……」
「まあ、恋人というものだな」
「え?奥さんじゃないの?」
「え、おく」
「いや、違う。……"未来の"、というところだ」
「ば、バロックさま……!」





さらにパニックになり、ドビンボーは大きい黄色の髪の毛をわしゃわしゃと掻き乱す。
ついでに私も"未来の奥さん"と宣言されたため、両手を頬に当てそんな未来を想像する。





「しかしなぁ、こんなバロックにも愛する女性がいるとはなぁ。よかったよかった」
「なぜ上から目線なのだ。"こんな"とは何だ」
「そういえばレディ、お名前を聞いておりませんでしたね」
「あ、ミレイ・シュヴェルツと申し上げます」
「ミレイ・シュヴェルツ、ミレイ・シュヴェルツ……いい名前だぁ」





何回も私のフルネームを呟き、宙を仰いで感傷に似た何かに浸るドビンボー。
別に私の名前には特別なものはないと思うのだけれど……。





「ミレイさん、ご存知です?大学時代のバロック」
「えっ!実は知らないんですよ……!」
「おい、やめろ」
「ワタシとしては大学時代のバロックが、"バロック・バンジークス"であるからして。今回こうして倫敦に来てビックリしましたよ」
「?どういうことですか……?」
「こんな殺意に満ち溢れたヤツじゃなかったんですよ、昔は。お兄さんの背中を追って、ただ純粋に検事を目指してて」





ドビンボー曰く、今のような雰囲気になったのは兄クリムトが亡くなってからだと言う。
あまりバロックは昔のことを話してほしくないようで、気難しそうな顔をしている。

殺意、というのは間違ってるようで間違っていないと思う。





「だからワタシに殺意を向けるようなヤツじゃなかったんですけどね」
「……殺意を向けているつもりはないのだが」
「どの目が言う」
「チッ……もう出港まで時間が無いのだぞ」
「あッ、舌打ちしただろ今」
「ど、ドビンボーさま、独逸にお帰りになるのですよね?」
「はい!もっとレディとお話したいところですが」





確か倫敦万博での事件の裁判が終わった後、急遽バロックがドビンボーを独逸に帰す手配したのだとか……。
"久しぶりの倫敦だから観光したかったなぁ"と呟いていたからドビンボーの意思ではないようだ。
しばらく考え込んでいると、ある一つの可能性を思いついた。

ドビンボーを独逸に帰したい、いや、大英帝国を出国させたい理由が。





「バロックさまと、ドビンボー博士……本当に仲良しなのですね!」
「ミレイ、」
「いやぁ、本当にそうなんですよぉ」
「とにかくドーバー港へ向かうぞ、ベンジャミン」
「そういうことでレディ、また出会うことがあれば!」
「はい!ドビンボー博士もお元気で」





半ばバロックに強制的に連れて行かれたドビンボー。
お互いの姿が見えなくなるまで手を振っていた。

なかなか素直でないバロックだが、ドビンボーを大事に思う気持ちが伝わって微笑ましくなるのだった。



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