Sweet dreams-DGS

□大逆転男子より愛を込めて
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〜成歩堂龍之介〜

「大丈夫、大丈夫……」





場所は221Bの屋根裏部屋。
そこに一人ぶつぶつと呪文のように"大丈夫"と呟いているのは、成歩堂龍之介。





「アイリスちゃんにレシピを教えてもらったし、寿沙都さんにも味見してもらったし……よしッ!!」





普段法廷で皆に届くように出すための大声を狭い屋根裏部屋で出した結果、部屋が少しミシミシと音を立てた。
それと同時に玄関のベルが鳴らされる。

しばらく間が空いた後、階段を駆け上る足音が聞こえた。





「ミスター・リューノスケ……?あ、いた!」
「っ、ミレイさんッ!!きゅ、急にお呼び立てしてすみませんッ!!」
「いえいえ、でもアイリスちゃんが何も言わずにリューノスケが待ってるとだけ言うから、何かと思えば驚きました」
「あはは……実はですね、これなんです」
「まあ!もしかして……」





小ぶりな籠に入れられたココア色のクッキー。
それとまだぎこちない英語で
『Happy Valentine's Day!』
と書かれたメッセージカードが一緒に入っていた。





「今日はバレンタイン、ですよね。ミレイさんにいただいたお礼に、僕からも作ってみました!」
「リューノスケが作ってくださったんですか?すごい!」
「えへへ、アイリスちゃんと寿沙都さんにすごく協力してもらったんですけどね」
「それでもすっごく嬉しいです!これ、ゆっくりお家で食べていいですか?」
「もちろんです!」





ミレイはとても嬉しそうに頬を染め、クッキーの入った籠を抱きしめた。





「大英帝国という異国に来て、不安な中いろんな人に出会いました。その中で優しい人もたくさんいて、ミレイさんはその一人ですから本当に感謝してるんです」
「極東から来ていただいて……そう思ってくれたなら、私も嬉しいです」
「これからも、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ!」





二人は笑い合い、帰るミレイのために玄関までリューノスケが付き添った。

すると玄関の扉を開けたと同時に、こちらのほうへ来る人影があった。
どうやらミレイに用がある様子だ。





「ミレイ・シュヴェルツさま、でございますか!」
「は、はい。そうですが」
「ハート・ヴォルテックス首席判事閣下殿から、緊急の伝言が届いております!」
「え……」
「え!?ヴォルテックス首席判事って、あの……」
「至急首席判事執務室にご足労願いたい、とのことです」
「わ、わかりました。わざわざありがとうございます」





結局誰なのかわからなかったが、伝えることだけ伝えると颯爽と去ってしまった。
龍之介とミレイはしばらく呆然と立ち尽くしていた。





「……ハッ!ミレイさん、早く行かなくては……!
「そ、そうですね!あ、クッキー本当にありがとうございました!」
「どういたしまして!では、お気をつけてー!」





急かすような別れ方になりつつも、ミレイはクッキーの入った籠を抱きしめながら足早に221Bを出て行った。
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