Sweet dreams-DGS

□蝋人形の館
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大英帝国の倫敦では、現在倫敦万博が開催されている。
それと同時に倫敦市民に人気なのが、『マダム・ローザイクの館』という見世物小屋だった。

ある日、私とバロックはホームズに誘われてその館に展示されている蝋人形を見に来たのだった。
ちなみにメンバーは私、バロック、ホームズの他にアイリス、リューノスケ、スサトがいる。

6人は有名人の蝋人形の展示を見た後、特に人気(?)らしい恐怖の間に訪れていた。





「……うう……」
「さ、さっきは有名人で感心の声しか出ませんでしたが……」
「今はもう、ため息すらも出ません……このまま息が止まってしまいそうです……」





恐怖の間には、昔倫敦を騒がせた殺人鬼が展示されていた。
蝋人形を作る際には本人から型を取るそうだが、殺人鬼に至ってはただただ恐怖でしかない。

私は恐怖の間に入ってから、バロックにしがみついていた。





「バロックさま……これが、いつの日か教えていただいた事件の数々、なのですね」
「ああ。……それはもう、倫敦を震撼させたものだ」
「わかってはいるのですが、動いたらどうしよう……と思ってしまいます」
「……もし動き出してミレイに危害を加えようものなら。私の鋼鉄のカカトで粉々にしてやるから安心しろ」

「……ホームズさん。今日ばかりは"一日蝋人形"じゃなくてよかったですね」
「僕は生きているから粉々にはならないだろうけど、次ミスター・ナルホドーと会うときは本当に蝋人形としてここに飾られるかもね!」
「……シャレになりません……」





そんな会話を繰り広げていた一行の元に、一人の女性が現れた。





「皆様……"恐怖の間"はお楽しみいただけて?」
「あ、貴方は……?」
「この『マダム・ローザイクの館』の女主人、コネット・ローザイクと申します」
「なるほど、貴方が……」
「マダムと言っても、年齢は26ですのよ。"マダム"のほうがハクがつきますでしょう?」
「あはは、そういうものですかね……」





コネット・ローザイク。
私と4歳しか年が変わらないが、私よりもずっと大人びている。
……魔法使いのような衣装も影響しているかもしれない。





「そちら……中央刑事裁判所の"死神"、でございますわね」
「……ああ」
「貴方のことは存じ上げておりますが……そちらの、可愛らしい女性は?」
「!……あっ、ミレイ・シュヴェルツです。えっと、バロックさまの……」
「決まった肩書きは無いが……"いずれ伴侶になる者"とでも言っておけ」
「っ!?ば、バロックさま……!そ、そんな……」
「ふふ、お熱いですこと」





マダム・ローザイクに話しかけられただけで動揺しているのに、追い打ちをかけるようにさらりとバロックが
"いずれ伴侶になる者"と知り合いの前で宣言し出した。

私は羞恥のあまり、蝋を溶かせるほどの熱さにくらくらしていた。





「わー!検事のお兄ちゃんすごーい!」
「え、英国の方はこんな感じなのですか……!?」
「死神くんを基準にするのはよろしくないと思うがね。ほら、ミレイさんもとけそうだ」

「ところで……奥の緞帳の先にある、"特別展示室"はご覧になられまして?」





周りがヒートアップさせようとしていた時、マダム・ローザイクが皆を奥の緞帳に注目させた。
そのおかげで心を落ち着かせることができた。

……落ち着いたのも束の間。
赤い緞帳の僅かな隙間から、ここの恐怖の間に匹敵するほどの冷たい空気が流れ込んでくる。





「えっと、コネットさん……向こうには、何があるのですか……?」
「ふふ……ミレイさま。それはもう、恐怖の間に匹敵するほどでございますよ」
「え……」
「追加料金が要りますけれど……どうです?倫敦万博の思い出と一緒に」





誰もが凍り付き、一歩踏み出そうという者はいない。
そんな中初めに口を出したのは、ホームズだった。





「……さて!僕は通常業務に戻るとしよう」
「え、ホームズさん?」
「今日は"一日蝋人形"は頼んでおりませんよ」
「成歩堂さま。ここは日本男児として、大英帝国の皆様にその"覺悟"をお見せするべきかと存じます!」
「す、寿沙都さん、それはちょっと……」
「ミレイに真っ先に恐怖の体験をさせるつもりか?……まあ何かがやって来たところで、奴は私の体に触れることすら出来ないであろう」

「さすが死神くん!襲撃に遭ってなおピンピンしてるわけだ!」





ホームズを筆頭に思い思いに喋り、マダム・ローザイクは手の甲を口元に当て優雅に笑う。
そんなある意味混沌とした状況を裂くように、リューノスケが叫んだ。





「異議あり!!」



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