Sweet dreams-DGS

□すき、すき、だいすき
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今思えば、きっかけがあったのかもしれない。
けど、そんなこと忘れてしまった。

ただ、あの人を見つけて、したくてたまらなかった。





「はあ、はあ、はあ……」





仕事場である自室、いない。
寝室、いない。
食堂、書斎、浴室、ワインセラー……。





「!バロック、さま……!」
「ミレイ、どうした。そんなに息を荒げて……」





ワインセラーにいた。
愛しの人は、おそらく今夜飲むであろうワインを選んでいるところだった。
多種のワインの薫りが混ざり合う中だが、構わない。

我慢することは、それに替えられない苦痛だ。





「バロックさま、お願いがあります。キスしてください」
「……なぜ急に」
「理由はいいんです。……キス、させてください……!」
「!、ミレイ、」





バロックの返事も聞かず、彼に飛びついた。
不意のためかわざとなのか、バロックは私を受け止めて壁に軽く背をぶつけた。
未だ動揺しているところに、追い打ちをかけるように口づける。

私は、彼ほどキスは上手くない。
だから、少しでも長く、長く口づけをして過呼吸寸前にさせる。
それか、小鳥のように啄んで、彼を熱くさせる。

どっちにしろ、彼の記憶に、脳に私が刻み込まれればいい。





「バロックさま、バロックさま……!」
「っ、ミレイ、落ち着け……」
「すき、すき……!」
「!……」





突然、バロックの動きが止まった、気がした。
どちらかというと、落ち着いたというところだろうか。

私を受け止めていた手が、上へと向かって、ゆっくりと頭を撫でた。
もう片方の手は背中を、同じように撫でる。





「……だいすき、です。バロックさま」
「ああ。……好きなだけ、言うがいい。受け止めてやる」
「っ……すき、すき、すき……!」





涙が、止まらない。
受け止めてくれるから?大好き、という想いが溢れてたまらないから?


とにかく、



どうしようもなく、好きと伝えたい時がある。

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