Sweet dreams-DGS

□愛の痕
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・人によってはR15かもしれませんが、全年齢で行きます。





***
特に誘うようなこともしていないし、前触れも無かった。
それは本当に突然で、私はごく普通に過ごしていた。





「ミレイ」
「はい、バロックさま」
「……痕を残したい」
「……痕、でございますか?」





痕、が何を表すのか私にはわからなかった。
一つ思い当たるのは、鎖骨のこれ。





「ここにありますでしょう?痕。これじゃいけませんか?」
「それは別だ。約束の印だからな」
「んん……違いがあまり……」
「私がしたいのは、」





鎖骨の十字の痕、ではなかった。
言葉で伝える代わりに、バロックは私の首筋を指で優しく触れた。
それでも私が考え込むと、無理矢理感を醸し出しつつ、そこに唇を触れさせた。





「……」
「……あっ、もしかして……。きすまーく、と呼ばれるものですか?」





上目遣いで私を見るバロックに言うと、満足気に微笑んだ。
彼を首筋から離れさせて、一つだけ条件を持ち出した。





「構いませんが、一つだけお願いがあります」
「何だ」
「首はおやめくださいまし」
「……なぜだ」
「いつ人に見られるかわかりません!ですから、人に見せない、見られないところにしてください」





バロックは考え込んでいた。
それは予定していた首に出来ないことからの落ち込みか、それとも新たな選択肢を与えられたからこそ、完璧な場所を追い求めているのか。

返事の代わりに、急に腕を引っ張られベッドに投げるように押し倒された。
思わず、あわわわと声が出る。





「バロックさま、ど、どこにするのですか……きゃっ」
「……」
「ちょっと待ってください、そんなとこ、聞いてません……!」
「見られないところならどこでもいい、と言ったであろう」
「どこでもいいとは、」





ベッドに押し倒されるなりすぐに、私の服を胸がさらけ出される寸前まで下げ出した。
全部脱がされるのか、と思ったがそういう訳ではなく、どうやら胸元に付けるようだ。

確かに、人前で胸をさらけ出すなんて家族か恋人の前のみだから、そうそう見られることは無いだろうけど……。





「ん……」
「痛いか」
「いいえ……ちょっとだけです、針で少しつついたような……」
「ふ……」
「……満足されました?」
「ああ、とっても」





痕を付け終わると、優しく頭を撫でられた。
まるで私が子供のようだが、バロックが満足しているなら、私も嬉しくなる。

胸元を見ると、十字とはまた違うほんのり赤い痕。
自分で服を着直すと、当たり前のことだが、すっぽりと痕が隠れた。
これならいいかな、と思ってしまう自分がいる。





「ところで……どうして急に?」
「ん……特に深い意味は無い」
「本当ですか?」
「……ただ、生活している一つ一つの仕草が愛らしく思えて」
「……興奮したのですか?」





最後にそう訊くと、ぷいっとそっぽを向いた。



〜終〜
 

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