Sweet dreams-DGS

□16話
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「まさか、ジーナちゃんがね〜!」
「ちょ、ちょっと、秘密だからね!」
「大丈夫よ、秘密にしておくから」





恋の話が想像以上に広がって、どういう流れか体をいろいろ弄られたりして、のぼせたことを忘れるくらい楽しい時間だった。
更衣室に戻り、服に着替えようとすると、アイリスがそれを止めた。





「あ、皆ちょっと待って!」
「どうかなさいました?」
「ホームズくんに教えてもらったんだけどね……ここには、"ユカタ"があるみたいなの!」
「ゆ、浴衣でございますか……!?あの、日本の!?」
「そうだよ、スサトちゃん。お風呂に入った人は、皆自由に着ていいんだって」
「ユカタ……私は始めてだわ」





どうやら、日本の和服の一つ、ユカタがこのホテルにあるらしい。
アイリスに連れられて更衣室の一角へ行くと、薄い茶色の籠の中に、何着ものユカタと思われる衣服が入っていた。

一着手に取って広げてみると、ドレスとはまた違った風貌だった。





「ようはこれ……折るみたいにして重ねるってこと?」
「そうでございます!」
「確かに、ミス・スサトも似た服を着てたね」
「あれも浴衣と同じ和服で、袴というものです」
「へえ〜……」





スサトが着ている"ハカマ"は、上の部分はユカタとほぼ同じだが、下はスカートのようになっていて、とても可愛らしい。
せっかくの機会だから、ユカタを着てみることにした。





「どう……かな」
「お〜!いいじゃん!」
「さすがミレイさま、お似合いです!」
「検事のお兄ちゃん、喜ぶね」
「えっ、あ、そう……かな」





アイリスの言葉で思い出した。
更衣室にこうやってユカタがあったということは、きっと男性の方にもあるはず。
ホームズもユカタのことを知っていたし、ならばバロックがユカタを着ているかもしれない……。

想像しただけで既に悶えそうだ。





「お、顔赤いよ」
「だ、だって……バロックさまも着てると思ったら……」
「ふふ、かーわいー」





次第に皆も着替え終わって、ユカタを着てお風呂場を出た。
夜だからか、お風呂場を出たところは少し寒く感じた。
でも体内はお風呂によって温められていて、外の寒さと際立って一層温かく感じる。

帰り道、2日目である明日に行く予定である、観光街の話になった。





「観光街、ものすごく人が多かったよね」
「ここ自体が人気の観光地だから、いつも人で賑わってるの。ちょうどこの時期は、限定のイベントもあるんだって!」
「まあ、それは楽しみです!」
「夜も素敵だったわね」
「そうそう、夜になれば装飾もきらきらしてるんだよ!」





人がいっぱいいるというのが気になる点ではあるが、話を聞くだけでも楽しそうだ。
アイリスの言っていたようなイベントや、食べ物なんて数え切れないほどあるだろうし、どれをバロックと楽しもう?と考えていた。

観光街の話で楽しんでいると、私とアイリスの部屋がある5階へいつの間にか辿り着いていた。





「あ、じゃあここでお別れだね」
「もう明日っきりだよね……二人ともありがとう、その、楽しかった」
「ふふ、私もよ、ジーナちゃん。ミス・スサトも」
「ええ……!ミレイさまのお話が聞けて、非常に光栄です!」
「じゃあ、皆気をつけてねー!また明日!」





ジーナとスサトに手を振って、アイリスと部屋が並ぶ複雑な廊下へと向かった。

もう夜だからか、人通りは私たち以外まったくない。
曲道ばかりのため、曲がるたび異世界へ続いていて、人々の世界から隔離されているような感覚だ。





「……ねえ、ミレイちゃん。楽しんでね!」
「え?……あ、うん!今も十分楽しいよ!」
「ふふっ、よかったぁ。この小旅行を企画したのはホームズくんなんだけど……楽しんでもらえてあたしも嬉しいの!」
「アイリスちゃんは、いい子だね。……それに、バロックさまといれる時間が多くて、私も嬉しいの」





アイリスが僅かに深刻な雰囲気を持って話しかけてきたので、一瞬戸惑った。
だけど、バロックといれる時間が多くて嬉しいのは本当だし、まだ1日目だが、たくさんの時間を余すことなく満喫できているのは確かだ。

そのことを言うと、アイリスが今までにないほど眩しい笑顔を見せた。
もはや、私以上に喜んでいるのでは、と思うほどだ。

―なんだかこの小旅行が始まってから、私やバロックを一番に楽しませようと頑張っているように見える。





「なら……本当によかったよ!まだ明日もあるからね!おやすみなさい、ミレイちゃん!」
「ええ、おやすみなさい。また明日ね!」





気づけばアイリスの部屋の前まで来ており、いつも通りの可愛さを振りまいて、行ってしまった。
一瞬、この僅かな疑問を晴らそうと思ったが、やめた。

きっと、今もバロックが待っているだろう。それに、バロックと共に時間を分かち合うことが、あの二人の望みなのだから。
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