Sweet dreams-DGS

□15話
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結局なんとかバロックを振り切って、しばらく休憩をとった後、少々早めの夕食をとることにした。
早めと言っても、案外今日は食事をとっていなかったため、お腹は空いていたのだ。

食事の方法はいくつかあり、ホテル内のレストランか、部屋に直接持ってきてもらう専用の食事か、また観光街に赴くといういくつかの手段がある。
部屋に持ってきてもらうのもいいが、種類が限られるということで除外し、観光街はさすがにそこまで行くのは疲れるということで除外。
そしてこの中で、ホテル内のレストランでとることに決定した。





「レストランはどこにあるのでしょう?」
「確か……3階にあったな」
「えっ、覚えていらっしゃったのですか?」
「ああ」
「では、そちらに行きましょうか。ああ、お腹が空きました!」





部屋を出発し、中央部分に向かい螺旋階段を1階降りると、いつも仲良しのあの二人に出会った。





「あ、ミスター・ナルホドーとミスター・アソーギでは?」
「ミレイさん、バンジークス検事!」
「二人はどうしたんですか?」
「僕たち、レストランで食事をしようと……」
「あら、私たちもそうだから、一緒に行きませんか?」
「は、はい!」
「お世話になります!」





見かけたのはリューノスケとアソーギ。
ほとんど会話をしていたのはリューノスケだが、アソーギくんが効果音が出そうなほどのお辞儀をしたものだから、思わず笑ってしまった。
実は私よりも1歳年上だが、なんだか微笑ましく、母性に似た感情が出てくるのはなぜだろう。





「二人とも、レストランに着いてからでいいんですけれど……わざわざ大英帝国に来てくださった理由を、直接お聞きしたいんです」
「!もちろん、お話します。寧ろこんなすごい国に来れて、光栄です。多少カルチャーショックがありますが」
「ふふ、異国ですもの。ね?バロックさま」
「ふん……私も驚かされることが多いが」
「そうなんですか?」
「あは、ははは……」





私とアソーギがいまいち理解ができてないが、バロックとリューノスケの間に何かあるようだから、裁判で知ったこともあったのだろう。
そうやって話している間に、とっくに3階のレストランに到着し、日本からの訪問者の話を聞くためにも、まとめて席をとった。

4人分、ちょうど気楽に会話ができる席がとれて、席に着くなりウェイトレスの説明を聞いた。
ここのレストランはバイキングらしい。





「じゃあ、先に取りに行きますか」
「ええ、そうしましょう」





バイキングは肉、魚介類、サラダなど多種類のメニューが用意されており、ドリンクはコーヒーや紅茶だけでもいくつかの種類があった。

バイキングの魅力として、自分の好きなものを好きな量取れることにあるが、それは時たま違う方向に出ることもある。
リューノスケが持つ皿を見ると、野菜が一切無く、埋め尽くすのは肉。
これには親友のアソーギも呆れ果てていた。





「成歩堂、ちゃんと野菜も食べろ」
「え、だって、それじゃあバイキングの意味がないじゃないか。好きなものを取るのが醍醐味だろ?」
「……あながち間違ってはいないが……」
「ふふ、面白いですね、二人とも」
「仲の良いことだ」





4人全員席に着き、食事を口に付けてから、リューノスケとアソーギが自ら話を始めた。

以前ホームズ宅で少しだけ話を聞いたが、ほとんどそれと同じだった。
だが、以前は確か細かいことを訊く途中で遮られたため、改めて訊くことにした。





「ではミスター・アソーギは、日本で弁護士だったのですね?」
「ええ、そうです」
「亜双儀はすごいんですよ!23歳、学生でありながら、弁護士なんです!」
「ほう……」
「私と1歳しか変わらないですから、更に素晴らしいことに感じますね。すごいですわ、ミスター・アソーギ」





そう言ってアソーギを褒めると、アソーギは俯いて顔や頭をぽりぽりとかいた。
そういうところは、幼さとも言えるのだろうか。





「ミスター・ナルホドーは……一体、どういう経緯で?」
「あ、あぁ……まあ、亜双儀と親友なのはご存知かと思いますが……同じ学校で、最初は弁護士を目指していたわけでは……」
「あら、そうでしたの?」
「今では想像もできんな」





そういえば、バロックとナルホドーは何回か手合わせをしているのだった。
見知らぬ遥か異国で、今まで国でも重大な事件しか扱ってこなかったバロック相手に、弁護士を目指してすらいなかったナルホドーが戦ったのはすごいことだ。
それも見ていると、アソーギのおかげとも言えるのかもしれない。





「こいつ、ある事件に巻き込まれて、容疑者になってしまって……」
「何かしたのですか?」
「ち、違いますよ!」
「ふふ、冗談ですよ。貴方がそんなことする人には見えませんから」
「どうだか」
「そこに俺も居合わせていたものですから、成歩堂を助けるために、法廷に立ったんです」





事件に巻き込まれて、やってもいないことで容疑者にされてしまって、さぞかし恐怖だったことだろう。
私でもどうしたらいいかわからないし、私にとってのバロックが、ナルホドーにとってのアソーギなのだろう。





「では、ミスター・アソーギが目的と仰っていた、日本の司法を変えるというのは……その事件から湧いたものなのですか?」
「そうですね……まだ日本では、英国ほど司法がしっかりしておらず、弁護士の立場も低く、決して良い扱いを受けていたとは言えませんでした」
「なるほど……」
「俺はそれを変えたかったんです。だから英国に」





アソーギもナルホドーも、確立した目的を持って我が英国に訪れている。
また、私と変わらないくらいの年齢で、国を変えたくて他国へ訪れる、その行動力にも感動した。

その感動に一人浸っていると、バロックが二人にこんな質問を投げかけた。





「ところで、そなたらはやはり船で?」
「あ、え、まあそうですね……あはは……」
「……じ、時間はかかりましたが、良い旅でしたよ」
「?」





あからさまに動揺しているものだから、何か訊かれてはまずいことがあるのだろうか。
まあ、無事英国に来れたことだし、過ぎたことは放っておくことにしよう。

そこから船での二人の過ごし方や、日本での私生活まで話が広がり、速い時間に夕食をとったのにあっという間に日が沈んでいった。

レストランに、談笑する声が響いていた。
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