Sweet dreams-DGS

□現パロシリーズ@
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バロックさんと主人公が自動車に乗る・現パロ
・時代設定は大体今くらい。場所も現英国/ロンドン。






***
私とバロックは、ロンドンの街や近郊を車でドライブしている。
ロンドンでも特に綺麗な景色が見れる場所を走っているため、私の目は外に釘づけだった。
だがときどき、運転席から手を繋いできたりする。

ドライブするきっかけは、突然彼のほうから誘われた。





「ドライブ、ですか?」
「ロンドン近郊の景色を見ながら、どうだ?」
「よく……TVで見るアレ、ですか?」
「まあ……そう、だな」
「!……行ってみたいですっ!」





なんだかバロックが以前、車を買ったというのはメイドから聞いた記憶がある。
だが、ロンドンの街に出たときに行き交う場面や、TVのフィクションやらで見かける分でしか私はわからなかった。
その分、それで見たことが体験できるのならと、幾分か早くYESと返した。





「わあ、ピカピカしてますねぇ」
「買ってまだ経ってないからな」
「えっと……隣に乗れば?」
「ふ、それしかないだろう。何を動揺しているのだ」
「だ、だって、車なんて初めてで……!」





屋敷に新しく作った車庫に連れられ、バロックが買った車を拝見する。
彼の車をまじまじと見るのも初めてなため、見るものすべてが新鮮だった。

凝視したまま動かないでいると、バロックが既に車に乗り込もうとしているところで、私も慌てて乗り込んだ。
乗った際に、車では必ずつけるシートベルトのつけ方を教えてもらい、準備万端となった。





「どこか行きたい場所はあるか」
「ええっと……今はまだ、バロックさまにお任せいたします。自由に走らせてください!」





行きたい場所が無いわけではないのだが、車に乗るのが初めてな分、とにかく目的を忘れ、車に乗って見える景色を堪能したかった。

頷いたバロックは、何か細かな操作をし始めた。
すると車全体に音と振動が響き、その後すぐに車庫から発進した。





「バロックさま、今のは……?」
「ん?ああ、エンジンをかけ、アクセルを踏んで発進させたのだ」
「まあ……なんというか、複数のことをしなくてはならないのですね」
「慣れればミレイでもできると思うが」
「そ、そんな……!ぜ、絶対覚えられませんし、事故を起こしちゃいます……!」





車は屋敷の車庫からだんだんと離れていき、交通量が半端ではない都市の中心部へと出る。
私は車の窓際に手をかけ、覗き込むように外の景色を眺める。

普段頻繁に都市部に出るわけではないが、よく知っていることに変わりない景色が、物凄い速さで自分の後ろへ流れていく。
このような光景は、電車に乗れば経験できるが、こんな街のど真ん中で経験できるのは、車以外無いだろう。

そして、運よく順調に進んでいた車は、本日初の赤信号に差し掛かった。





「……?バロックさま、あの……」
「?どうした?」
「そ、それはこっちのセリフです!……なんで手握ってるんですかぁ……」
「別に、これくらい普段のことだろう。困ることでもあるのか?」
「う……私は、その……。それより、バロックさまが運転に集中できないかもと……」
「くく、心配しなくてもよい」





赤信号の間、右手が温かくなったと思ったら、バロックがしれっと手を繋いでいた。
しかもさりげなく指を絡ませてきている。

彼曰く、手を繋いだりしても運転に支障はないらしい。
そりゃあ、手を繋ぐことは限られたことではないが、車の中という点からかとてもいけないことをしている感じがする。
その背徳感やらから、ただ好奇心で景色を眺めていた行為が、照れ隠しになってしまった。

信号が赤から黄色、そして青に変わった。
彼がどういう行動をとるか窺っていたものの、変わらず手を握られたままで、片手で運転していた。





「あ、危ないですよ……!」
「……我慢できないな」
「え、え……?」





突然見えないところまで続いている道から、行き止まりがある道に方向転換をし出した。
ここがどこだかわからないまま進み、少ししてすぐに止まった。

人気のない場所で、森までとはいかないものの、まばらに木々が生えている。





「ミレイ」
「は、はい……んっ」
「……っ、ふ、驚いているな」
「……!!当然ですよ……!」





車の外の様子を窺っているところを、バロックに名前を呼ばれ、振り返って唇を奪われるまでおよそ数秒。
彼に私の驚きようをからかわれるまで、思考がストップしてしまっていた。

我慢できないとはこういうことだったのか、としばらくして思ってから二度目の口づけが。





「ん、うう、バロックさまぁ……」
「たまにはいいだろう、こういうのも」
「……悪くは、ないです」





口端から漏れそうだった唾液を飲み込んで、息を整える。

すると、突然バロックが車から降り出し、私も降りるよう促した。
まったく説明がされず、何もわからないまま彼の後ろをついて行く。
進んでいくたび、まばらに生えた木々は次第に、一つの風景を映していった。





「まさか、あれは……!」
「行くか?ミレイ」
「はいっ!もちろんです!」





木々の隙間から覗く広大な青に向かって、愛する人と歩みを進めていった。



〜終〜
 

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