大逆転学園!

□理系だけがダメではない。全てだ
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「ひっ……!ば、バンジークス先生!」
「なんだ」
「なんだ、じゃないです!耳くすぐったいですよぉ……」
「ん、耳が好きなんじゃないのか?」
「言ってないです!」
「はは、仲が良いね!羨ましいよ」





私にしては黙々と受けていると、バンジークス先生が後ろから、耳に息を吹きかけてくるのだ。
それだけではなく、後ろの机に堂々と座っているため、視線とちょっかいを受ける。
ホームズ先生からは、止める気が窺えない。





「よくないですよ!そ、それに、変な声出しちゃったし……」
「まあ、バンジークス。彼女がやる気を削がれない程度にするんだよ」
「……勉強されないのも困るからな」
「ちょ、ちょっと!そもそもしちゃあかんです!」
「ミレイ?次は周期表だけど、」
「うわあああ」





学校に天国を求めてはいけない気がした。
目の前には、何とかウムとか言っているホームズ先生と、後ろには足を組み、"真面目にやらなかったら殺す"と言わんばかりのバンジークス先生。

というか、バンジークス先生は足を組むのが好きなのか?





「周期表下敷きなんてあるけど、欲しいかい?」
「……いらないです……」
「あまり短い時間で詰め込むと大変だろう?だから今日はここまで。復習はしておくんだよ?」
「は、はい……」
「ではバンジークスくん、君の生徒をお返しするよ」
「……ふん」





そもそも借りられた覚えはないし、物のような扱いをされている。
相変わらずバンジークス先生は何も言わないし。

あ、周期表下敷きが鞄から覗いている。いらないよ!





「じゃあねミレイ!次には周期表全部覚えるんだよ!」
「え!?無理ですよー!あ、教えてくれてありがとうございました!」
「うるさいぞ、神血」
「きゃっ!」





立ち上がって、ホームズ先生に周期表下敷きを返そうとしたら、これはデジャヴか、顎を掴まれ後ろに倒された。
このまま倒れるということは、机に頭直撃かと思いきや、想像ほど痛くはなかった。
なぜなら、そこはバンジークス先生の足だったから。





「せ、せんせい……?」
「……随分と仲がよろしいことで」
「うっ……それは、ほんと友達みたいな感覚で……あ!ほら、ワトソン先生とか!」
「……まあ、よい。それよりも、貴様はあんな声が出るのだな」
「あんな……?」





そういえば、バンジークス先生に耳をいじくられて、変な声出してたんだった。
周期表の力が強大すぎて、羞恥すらも忘れていた。
顔を覆って心の中で叫ぶ。今の気分はムンクである。

すると先生の悪だくみをする際の顔が見え、やばいと思っていたときには、耳に手がかけられていた。





「っ……!う、せん、せ……っ!」
「何を抑えているのだ?」
「先生が、声について言うから……!」
「……綺麗な声、ということがわからぬか?」
「え?ひっ、」





バンジークス先生の指が、私の耳の形に沿ってなぞられる。
初めの補習のときのように、さすがに吐息をかけられたら仕方ない。
しかし、指でなぞられているだけなのに、こんなにゾクゾクするなんて。





「貴様……経験済みか?」
「へ?何がです?」
「……そんな声、経験済みでないと出ないぞ」
「っ……!そんなわけないじゃないですかぁっ!」
「くくっ……冗談だ、馬鹿め」
「……先生のいじわる」





顔に熱が集中して、全否定すればバンジークス先生に笑われた。
しかし、私から見て先生は真面目で堅物なイメージだったから、冗談を言うとは思わなかった。

あ、本当に経験はしていない。





「もう帰る時間だ。荷物をまとめろ」
「むぅ……都合のいいところだけ持って行く……」
「む、周期表下敷きが落ちているぞ」
「先生、どうぞ」
「いらん。なぜ私がもらわねばならんのだ」
「ちぇ……」





いつの間にか周期表下敷きが床に落ちていたようで、バンジークス先生にプレゼントしようと思ったら、強制的に鞄に戻された。
教室を出る寸前に、教室に向き直った。





「……バンジークス先生、さようなら」
「……また明日」





淡泊な掛け合いだが、私たちの間に文句のつけようのない、仄かな繋がりがあるのは間違いない。
去り際、バンジークス先生が笑っていたような気もした。

―後日、周期表に関する小テストが出たのは言うまでもない。



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