大逆転学園!

□保健室
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「そのガーゼはやる。今日ばかりは当てておいたほうがいいだろう」
「……はいぃ……」





バンジークス先生の前でアレだが、痛みに耐えかねてソファに倒れ込んでしまった。
しかし大変なことではない。特に先生はよく知っているのだ、いつも机に倒れ伏している私を。
それもあってかまったく口出ししないし、こちらを見ていない。

あ、これだから私は寿沙都に注意されるんだったか。

そうこうしている間に、授業の終わりを告げる鐘が鳴った。
仕方ない、転んだのは授業の半ばくらいだったから。





「先生。次の授業もあるので、もう行きますね」
「ああ。帰り道で転ばぬようにな」
「さすがに転びませんよ!……あ、あと」





ソファから降りて、バンジークス先生の前に立つ。
案の定先生は、不思議そうにしていた。表情はいつも変わらないが。





「あの……今日は、その。ありがとうございました」





そうやって深々と礼をした。校長先生の前でもこんなきちっとしない。
すると……先生は、私に微笑みかけながら頭を撫でてくれたのだ。まるで、”よく頑張ったな”って言われてるみたい。










***










「失礼しまーす。あっ、先生〜!」
「あ〜!ミレイちゃん!」





私のオアシスでもあった保健室の扉を開いたら、魔王の如く佇むバンジークス先生がいた事件の次の日。
今日もいつも通り、アイリス先生に会いに来たのだ。

そしてアイリス先生は、普段通り友達感覚で応えてくれる。





「傷はどう?」
「あ……もしかして知ってます?」
「そりゃそうだよー!バンジークス先生から全部聞いてるよ!」
「全部ですか」
「うん、あることないこと全部」
「ないことはやめましょ」





まるでカフェの常連とマスターのように、気楽な会話が繰り広げられる。
まあ、保健室の先生はアイリス先生なんだから、知ってて当たり前か。





「それにしても、処置受けてるとき思ったんですよ。バンジークス先生ってこういう時の対処法、よく知ってるんだなぁって」
「確かにねー」
「だって、もう少しずつかさぶたが見え始めましたよ!」
「それは若いからね!」
「もー、アイリス先生ったら!」





とにかく処置を早くできたのは正解だったようで、痛みも出血もなく、かさぶたがお目見えしている。
バンジークス先生の力量だと言われても信じてしまうだろう。

そういえば、もう過ぎたことだが一つ気になることがあった。





「そういえばアイリス先生。昨日先生が出張だなんて、聞いてませんでしたよ!」
「えーっ、朝バンジークス先生から言われなかった?先生は皆知ってるはずだし」
「ま、マジですか」
「もしかしてミレイちゃん、寝てたりして聞いてなかったでしょ〜?」
「……あ」





思い当たる節は、残念ながらあった。
朝は担任であるバンジークス先生が、何か連絡があれば生徒に伝える時間がある。

その時私は机の上でゼリー、もはやゼラチンと化していたのだ。
それで寿沙都に忠告を受けていたものの、すっかり抜け落ちていた。





「うう……なんだったらバンジークス先生、叩いてでも教えてくれればよかったのに……」
「確かその日は授業は午後しかなかったんだよね」
「ん?そうでしたね」
「体育は昼休み前でしょ。ということは、午前中は伝える暇は無かったかも、ってことだよね?」
「あー、確かに会いませんでした。体育で転んで大恥かくまで」
「すなわち……ミレイちゃんに意地悪して、秘密にしてたってことだよ!」





な、何だって……?
私がバンジークス先生の話聞いていなかったことを利用して、保健室担当だったことを秘密にしていた、ということだろうか。





「そ、そっか……!私が保健室に遊びに行くの、しょっちゅうだから……!」
「怪我してもしなくても、末路は同じだったわけだねー」
「うっうっ……なんで意地悪するかなー、先生……」
「……気になる子ほど、ちょっかい出したくなるよね」
「えっ?」





アイリス先生がとても気になることを言った。
でも余計ににこにこしているし、きっと二度と言うつもりはないのだろう。

バンジークス先生が、まるで思春期男子みたいな思いを……?





「……そんなわけ、」
「素直じゃないねー」
「もうっ、アイリス先生!」
「あははっ!でも私は応援してるよ!」
「もー!」



***
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