大逆転学園!

□保健室
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始業式から早速様々な厄災……ごほん、ハプニングが起こる学校生活。
もうその始まりから1ヶ月が経とうとしていた。

私の苦手な、そして忌々しい体育の授業。
勉強もダメで運動もダメなのかと言われると、少し傷つく。
それは置いといて、そんな苦手を証明するかのように、クラスメイトの前で盛大に転んでしまったところなのだ。

私は恥ずかしいし、痛いわ血が出るわで、クラスメイトは軽いパニック状態である。





「神血!」
「神血さん!?」
「ミレイさま、保健室に一緒に……」
「あ、皆ありがと。一真、龍之介、寿沙都もいいよ、自分一人で行くから」
「しかし……」
「ほら、血が出てるって言ってもすり傷程度でしょ?ワトソン先生に消毒でもしてもらってくるだけだから」
「……そこまでミレイさまが仰るのでしたら」





私のクラスメイトでも特に仲の良い、いつもの三人組が自分の事のように血相を変えてやって来た。
寿沙都はまだ納得のいかなそうな顔をしていたが、しぶしぶ許してくれて、その代わり彼女と一真、龍之介が保体の先生に伝言しに行ってくれていた。

あの三人は仲が良いみたいだが、よいクラスメイトだと思う。





「やばっ、血が……」





そんなことを考えている間にも出血は止まらず、脛まで垂れ続けていた。
幸いにもわざわざ校舎に入らなくても、グラウンドから直接保健室に行けるようになっているので、少しの辛抱だと引きずりながらも走った。





「失礼しまーす、アイリス先生消毒を…………失礼しました!!」
「待て馬鹿者。戻るな」
「いえいえいえ!どうやら部屋を間違えたらしく……」
「間違えてなどいない。保健室だここは」





緊急事態が発生した。

アイリス先生だと思って、というか大前提なのに、保健室に入ったら足を組んで堂々と居座るバンジークス先生が……。
と思ったら、今度は片手なのに両手以上の力で私を引き戻そうと腕を引っ張ってきた。





「ちょ、待ってください!私怪我人ですから!そんな乱暴に……」
「貴様が逃げようとするからだ」
「だって……アイ……ごほん。ワトソン先生だと思って!というかなんでバンジークス先生が!」
「落ち着け。今日はワトソン先生が出張だから、代わりに私が担当している。ただそれだけのことだ」
「うう……そこでなんで先生なんですか……」
「ふん。まずは向かいの椅子に座れ」





バンジークス先生が座っているのは、普段はアイリス先生が座っているところで、ここで主に状態を見たりしてくれる。
その証拠に机の上には書類がたくさんあるのだ。

そして私は、その向かいの回転椅子に座った。





「片足をここに乗せろ。傷を見る」
「えっ、そこにですか?」





どう考えても先生の視線は、己の足。詳しく言えば太腿。
そこに乗せるのはちょっと……と考えている余地も与えず、足が引きちぎれるかと思ったほど引っ張られた。





「わっ!?」
「……まだ血が止まっていないな。おい」
「は、はい」
「このガーゼを、なるべく締め付けるようにして当てろ。血が止まったら消毒する」





そう言って渡されたのは、膝を膝裏まで通って一周できるくらいの長さのガーゼ。
締め付けるように、とのことなので、遠慮せずに少し痛みを感じるくらいまで締め付けた。
ガーゼの表の方が、少しずつ血で滲んでいくのがわかった。





「……緊急時の対処法、よく知ってるんですね」
「……一応教師だからな」





ぶっきらぼうに言うと、机の上のある書類を引っ張り出し、そこに何か書き出した。
確か、生徒の名前と症状について書くところだったか。
アイリス先生に会う目的も兼ねてよくここに来る私は、それは見覚えのあるものだった。





「そろそろかな?」





数分程お互いに無言の中、血が止まるのを待っていた私はガーゼを取って確認してみた。
まだ赤いけど、もう血は出ていないようだ。

それを見ていたバンジークス先生は、今度は消毒液を持ってきて、再度私の足を太腿に乗せた。





「あまり動くんじゃないぞ」
「しょ、承知しました」





転んで擦り傷を作って、消毒液を垂らされたのは一度きりではないため、消毒の痛さは身に染みている。
しかし記憶は如何に現実に乏しいものか……。





「うあっ……!痛っ、しみる、っ……!!」
「おい、だから動くなと言っただろう」
「い、痛いです先生!わざと強く押し付けてませんか、っつ……!」
「こういうのはきちんとしておかないと、今より痛い目に遭うぞ」
「脅しはよくないですっ……!」





傷にしみる痛みと同じくらい厳しいバンジークス先生のせいで、このやり取りはたったの数秒間で行われたことなのだが、私にはもう数時間分の疲れのような気がした。
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