大逆転学園!

□ほぼ時代遅れの家庭訪問
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私の学校には"家庭訪問"がある。
これだけ聞くとあるところはあるし、当たり前のところは当たり前かもしれないが未だに残っている古い習慣がある。

それは……。





「ほんとわけわかんない。いつの時代よ」
「まあまあ……」
「どう考えてもプライバシーを侵してる。特に女子なんて秘密の花園を覗くようなもので……」
「ミレイさま……。とりあえず、バンジークス先生がいらっしゃるのですからちゃんとするべきかと」
「言っとくけど結構綺麗なほうなんだよ」





なんと時代遅れなことか。
家庭訪問をする際、担任が生徒の部屋まで入って来るというのだ!
プライバシーうんたらで無くなったの何だったんだ。

と、久しぶりに一緒に下校している寿沙都に愚痴を言っていた。
ちなみに龍之介と一真もいるよ。





「いいよねぇ、寿沙都とか一真とか。非の打ちどころ無いじゃない」
「まあ……。それよりもミレイさま、嬉しいのでは?」
「はぁ?なんで?」
「?そういう関係では?」
「なななな、何、そういう関係って……」





寿沙都、どう考えても私とバンジークス先生がカップルと思ってるな。
……え?そうじゃないの?っていう声が聞こえるけど、いや、告白はしたけど……。





「え?何をしたんですか?」
「わあああ!ごごごめん、も、漏れてた?」
「ええ、いろいろ」
「いろいろって何いいい」





気づけば家は目の前。
寿沙都はもう少し歩かなければならないから、ここで今日はお別れである。
すると後ろの方から龍之介と一真がまたねと手を振っていた。

寿沙都というピンチは免れたが、話題の本人という壁が待っている。
家に帰るとなぜかお母さんが嬉しそうだ。

……先生、イケメンって有名らしい。





「はあああ……もうどんな顔をすればいいんだろ……」





二階にある部屋に行ってベッドに倒れ込む。
さっき寿沙都と話していたのは部屋の綺麗さ。

頭が悪い=部屋が汚いというイメージがあるが、実は私の部屋はそんなに汚くない。
何と言ったって物が少ないからなのだ。
……勉強用具が無いとも言える。

特に寿沙都と一真は学校以外の勉強用具もあるから、もはや質の差である。


さて、私の学校の家庭訪問だが、三者面談を兼ねてもいるのだ。
先に玄関で教師と保護者が軽く話をして、その後生徒の部屋に訪れ三人で学校生活について話す。
だから生徒はほとんど部屋で待機となっているのだ。





「……掃除機、かけようかな」





物が少ないと言っても、嫌でもホコリやらゴミが出る。
そんなところにバンジークス先生を迎え入れられない、と思い掃除機をかけた。





「……彼氏が来るみたい。……っ、な、何を言ってるの、私は……」





一人で勝手に妄想して勝手に赤面していると、ピンポーンとインターホンが鳴ったのが聞こえた。
思ったより早くないか。
急に心臓の鼓動が早くなって、じっとしていられず部屋をうろうろする。

一階から僅かにお母さんとバンジークス先生が会話しているのが聞こえる。
玄関ではあまり深くは話さない。だからここに来るのはそう遅くない――。





「…………」





こんな無口な私、バンジークス先生が見たら笑うかな。
数分もしない間に階段を上る音が聞こえ、ドアノブを回し、扉を開いて――。

どんな状態で先生と接すればいいのか。
正座?フレンドリーに?いや、あくまでも教師と生徒だ。
しかもそんな姿をお母さんに見られたらたまったもんじゃない。

結果、ベッドの上で正座をして俯く形となった。





「……ミレイ」
「っ!?な、なんで名前……って、先生、一人ですか?」
「母親から許可を頂いてな」
「ど、どういう……」
「『少し部屋で二人だけになってもいいだろうか』と尋ねたら、快諾してくれた。という具合だ」
「お、お母さん……」





マジか。普通は疑ったりしないのか。
そもそも学校のシステムを疑おうよ、お母さん。
教師とはいえ男性です。

絶対に言わないけど告白したよー!





「……思ったより部屋は綺麗だな」
「やっぱりそう言う。成績と部屋は比例しないと思われ」
「しかし……勉強する気のない部屋ではあるな」
「うぐぐ……似たようなこと思いました……」





早速部屋に対して批評を言われると、なぜかバンジークス先生もベッドに座った。
座ってもなお背の高い先生を見上げながら、
"これ1シーンとして切り取ったらただのカップルだー!"と心の中で叫んでいた。





「まず学校生活についてだが……貴様の想像通りだと思え」
「はあ」
「とにかく補習は変わらずやる。夏休みは……」
「いやあああ」
「安心しろ。私が四六時中見てやる」
「嫌な予感しかしません!」
「……とまあ、他は特に無い。態度が悪いわけでもないからな」





貶されてるのか、褒められているのか。
とにかく夏休みは地獄だということが身に染みた。

しかし、これを伝えるためだけに二人きりになったのだろうか。
だったら普通に三者で言えばよかったのに。





「今のは前置きだ」
「へ?」
「本題は他にある。……まさか、これで帰るとでも思ったか?」
「え、ひゃ……」





バンジークス先生の言葉ばかりに囚われていると、肩が強い力で押されてベッドに倒されていた。
あの時と同じだ、なんて思うけれど想いを認めたからかベッドの上だからか、緊張の度合いが違う。

顎が掴まれ、顔を逸らせないようにさせられた。





「……こういうことをされるのは初めてか?」
「どういうことですか……。私の年齢ですよ、そんないないですよ」
「今の時代は多いと思うが……まあよい」
「何ですか…………ん、!?」





勝手に自己完結して何なんだと思っていると、唇にあたたかいものが……。
男性とそういうことをしたことがないのは本当だ。
だからこそ、これが何かすぐに理解することができなかった。

あたたかいものが離れると、先生の唇が少し艶めいていてドキッとした。





「せ、せんせ……こういう、ことは……」
「ん?初めてか?」
「……そう、ですけど……」
「正直、私が初めてでよかった。……他の輩に奪われようものなら、堪ったものではないからな」
「っ……」
「……ミレイ、少し失礼する」





バンジークス先生がそう言うと、私の服を鎖骨が見えるぐらいまでにずらした。
何をするのかと思いきや、直後に吸われるようなくすぐったい感覚がして身を捩じらせる。

その感覚が無くなったくらいに視線を下の方に向けると、鎖骨の下あたりにうっすらと赤い痕が。





「な、なんですかこれ……?」
「そなたは私のもの、という証だ」
「はあ……」
「ギリギリ制服を着れば見えぬだろう」
「え、どういうことですか?」
「これは当分残る」
「え、えー!困ります、皆にバレたら……!」
「適当に説明しておけ。第一見られる前提という意味もあるが」





何だ何だ、動物がナワバリを示すみたいなことか?
絶対寿沙都とかに見られたら、『まあ、ついにそこまで……』と頬を染められそう……!!
一真と龍之介はいいとして、たとえ"バンジークス先生じゃないです"って言ったとしても他に誰かいるのか、ってことになりかねない。

とわなわなしていると、かなり馬鹿にしたように鼻で笑う先生。





「ほんと、何か変なことが起きたら先生のせいにしますからね」
「どうとでも言え。では、私はそろそろ失礼しよう」
「もう帰るんですか?」
「次の生徒だ。……何だ、嫉妬か?」
「ばっ、ち、違います!」
「安心しろ、次は男子生徒だ。……また明日、だな」
「……はい。先生」





やっぱり、ちょっぴり寂しかった。





次の日体育の着替えで、うっかり鎖骨を晒した結果寿沙都に
『これは何ですかミレイさまーー!?』
と尋問されたのは言うまでもない。



***

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