大逆転学園!

□"想い"は一線を越えた、はず。
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「……でも、先生?」
「なんだ」
「私、ずっと……この気持ちが恋だなんて、思わなかった……いや、認めていなかったんです」





初めからそうだった。
バンジークス先生がふとした時に見せる、私を惑わす行為。
そもそも惑わされた、という時点で、先生のことが気になっていたという証。

私は正直、先生に恋したなんて思いたくなくて。
見ないフリをしていたからこそ、この感情が何かわからなくなった。





「でも先生、前に言いましたよね。考えてもわからない時がある、って」
「……」
「それでちょっと、楽になって。そして、今日先生が"好き"って言ってくれて……確定したんです。ああ、いいんだ、って思えたんです」
「……」
「へへ、わからなくなるくらい、バンジークス先生のことが好きだったみたいです」
「……それほどまでに好いてくれていたとは」





照れながら言うと、至極愉快そうな顔をしてくれた。
こんな、自信ありげな顔も好きだ。
そういうことで喜べるなんて、重病ね、私。





「ところで……返事がNOだったら、貴様が無事だったかどうかは知らぬが」
「え?早速死の危機だったんですか?あそこ分岐点だったんですか!?」
「覚えておらぬのか?私の性質を」
「性質……?」





何だろう、性質って。
今の流れなら、バンジークス先生に好きな人が出来た場合、かな。

……あ。

『誰の目にも触れさせぬようにするか……狙う輩を薙ぎ倒すか。どっちがいい』

そうだ!バンジークス先生、本気でそういうこと言う人だった……!
これはちょっとシチュエーションが違うけど、もし私が他の人を好きになったり、好きになられたら、その人物は死あるのみ!





「ちょっと、恐怖で悪寒がしました」
「でも免れたな。貴様が素直なおかげで」
「……日頃の行いですね」
「さあな」





いつの間にか、私を指す言葉も"そなた"から、いつもの"貴様"に戻っていた。
きっと教師と生徒の関係だから、公の場は苗字呼びのままなんだろう。

それでも、想いが通じ合っただけで本当に嬉しかった。
さらけ出しすぎてもいけないが、隠し事は疲れる。





「ふう……これで自由にできるな」
「自由、って……?」
「今まで"好き"すら認めていない貴様に、何でもかんでも出来るわけではなかったからな」
「……それって……」
「もちろん公の場では控えるが……これから二人きりの時は覚悟するがいい」





さっきの悪寒が戻って来た。

これでもうバンジークス先生は、ブレーキをかけずにアクセル全開で来そうだ……。
今の学年が始まって、もっと言うとバンジークス先生が担任になってから、厄災…ではなくハプニングが多発している。
それが告白によって無くなるわけではなく、更にエスカレートさせる結果になってしまった。

そんなハプニングの日々を想像して、頭を抱えた。心の中で。





「……残念だが、もう帰る時間だ。この先はおあずけとしよう」
「こ、この先……。で、では、帰らせていただきます……」
「……送って行くか?」
「あ…………い、いいです。手間をかけてしまうので……」





もしバンジークス先生の車で帰ることになって、再び二人きりになったら。
先生のほうもそうだが、私のほうこそ普通にいられるかどうかわからない。

先生がさっき言った"おあずけ"みたいに、送ってもらうのは先延ばしにしよう。
今は先生のためにも、一人になりたい。





「……寄り道せず、真っ先に帰るのだぞ」
「はい。今日は……ありがとうございました」





深くおじぎをして、バンジークス先生をじっと見つめた。
と言いつつも、先生が私を見ていたのもあるが。
――新学年の初日は、この風貌に釘づけだったなぁ……。

なぜか、"先生、もっと先に行きたかったもしれない"なんて思い始めた。
さっきも少し、私のために我慢していたようなことも言っていたから。

でも――。





「それでは、失礼いたします」





この想いでは、一線を越えたって思ってますから。



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