A vampire of death , love is there?
□6話
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カヤと共にいたのは、私のいとこのメイドだった人で、密かに手助けをしてくれた人でもある。
なぜここにいるのか、聞いてみることにした。
「その……あの事件から、どうなりましたか?」
「……しばらくは、我々メイドのほうも動けずにいました。自由になったのは数日後で、ひとまずいとこ―主との契約を破棄いたしました」
「では、どこにも雇われていない状態で?」
「私以外は、そうでした。その数日後……私はとある方に、”貴方を雇いたい”と言われたのです。それが……エッグ・ベネディクト様でした」
「!ベネディクトが……」
「顔見知りの者はおりませんでした。どうやら、私だけが雇われたようです」
伏し目がちに、今までの事態を話すメイドさん。
ちなみにカヤさんは部屋の中に入っていて、クローゼットの中の服を整頓していた。
そういえば、事件が起こった数日後といえば―。
確か、私がバロックと契約を交わしたくらいであったか。
まさか、それがベネディクトとも関係が……?
「ありがとうございました、教えてくださって」
「いいえ!私のほうこそ……ミレイさまと話ができればと思っていて」
「……そうでしたか」
「本当に心苦しいですが……私はベネディクト様に関して、手出しすることができません。どうかご無事でありますよう、お祈りしています」
まるで教会に祈りを託す者のように、両手を組んで一礼をし、去っていった。
その背が見えなくなるまで、切なげに眺めていた。
あの人には申し訳ないのだが、私は疑ってしまった、彼女を。
私と話ができれば、と言っていたが、まるで私がここに来る、そして来たことを知っていたかのようだった。
でも、責めることはしたくないとかぶりを振った。
「ご主人様。衣服をお着替えになったほうがよろしいかと」
「!あ、た、確かに」
「替えはお好きなものを。現在着ているものは洗ってお返ししますので」
「よろしくお願いします……」
そういえば、カヤさんから見たら私はご主人様なのか。
その呼び方と彼女の気迫に驚きながら、半ば強制的に服を脱いだ。
さて、クローゼットの中にはどんな服があるのかと、これまた煌びやかな装飾が目立つ両開きの扉を開ける。
カヤさんが服は好きなものを、と言った通り迷うほど数はたくさんあった。
ただ一つだけ気になるのは、全てウエストが絞られそこからふわりと広がるスカート。
「全部そういうのか……まるで貴族にでもなったみたい」
そう苦笑いしながらも、結局は好みの服を選んだ。
選んだのはナチュラルなグリーンのドレスで、色素は薄めでも鮮やかだった。
とても可愛いが、軟禁されている状況じゃ雰囲気どころではない。
私が着替え終わるとほぼ同時に、カヤさんが脱いだ服を持って部屋を出て行った。
メイドはご主人様に忠実なのはいいが、時々怖く思える。
やることが無くなった私は、着てばかりのドレスに申し訳なく思いながら、ベッドに寝ころんだ。
「……バロックは、今何をしてるかな。!もしかしたら……同じ”世界”にいるかもしれない」
あのベネディクトは、ハッキリとは言わなかったものの吸血鬼には違いない。
だとすると、もしや私がいるのは吸血鬼の世界なのだ。
それに、ベネディクトがそれを仄めかすようなことを言っていたから。
ならば、いつものように呼べば来るかもしれないと思って呟いてみるも、バロックは来なかった。
少しだけ胸が絞められたように痛くなる。
「……もう私がいないこと、気づいてるよね。彼は彼なりに調べたりしてるのかも……」
そう思い込むことしか、自分を慰めるほかなかった。
***
「チッ……どこへ行った」
ミレイが行方不明になったとき、吸血鬼の世界にいたバロックにも異変があった。
それは、契約の際に手の甲に刻まれる紋章。それが妙に激しく発光し、その後発光しなくなってしまったのだ。
吸血鬼である彼が指令しても、発光することはなかった。
その代わりただ一つ揺るがないのは、己の契約者に危険なことが迫っていること。
バロックは契約者に謎の手紙が来ていたときから、不穏な空気は感じ取っていたし、それに加えて犯人は既にわかっている。
あと場所を絞ることができれば、助け出せるに違いない。
「……ネットワークを切られている……。!ということは……」
バロックはここで、あることを思い出した。
契約している吸血鬼と人間、その間にしかできないことがある。
それは、よく己の契約者が無意識に行っている、名前を呼べば遠くにいても気づくことができるというもの。
所謂、"テレパシー"なるものができるのだ。
しかし、今それが何者かによって切断されている。
それができるのは、位の高い吸血鬼だけなのだ。ということは―。
「やあ、死神くん。何をしているんだい?」
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