A vampire of death , love is there?

□3話
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すると左手の甲から赤く発光して、何事かと見てみると、ツルのような曲がりくねった線で作られた、紋章のようなものが甲に出来ていた。
指で軽く触れてみるが、特に変な感触があるわけでもない。





「バロック……これは?」
「私とミレイの関係を示す証のようなものだ。素が光だから、普段は消えているがそこにある。もし吸血鬼に会ったときに、これは証明となるのだ」
「ふうん……よくできてるのね」
「あと……もう一つ、契約したうえでお願いがあるのだが」
「なに?」





どうやら手の甲の光は、契約した際には一度発光するようで、バロックが触れたら消えた。
まったく不思議な仕組みである。

それよりも、バロックが言ったお願いとはなんだろうと思っていると、彼が私の唇を指で触れたのだ。
―まさか。





「ちょ……ちょっと、待ちなさい!ま、まさか……」
「……ちゃんと説明するからな、よく聞け」
「う、うん」
「これから私は、そなたの血を尋常じゃないほど吸う。それがそなたに何の影響も与えない、わけではないのだ」
「なんか害があるの……?」
「それは個々で変わるから、一概には言えん。……だから、お互い免疫をつけなければならない。それで」





―唾液を交わさなければならないのだ。

その答えは想像以上だった。
私は単に口づけをするだけだと思っていたのだが、深いほうのようだ。

どっちにしろ口づけには変わりないため、一つ一応大事な問題が生じる。





「う……やっぱり、そうかと……」
「何か問題でもあるのか」
「あ、あるわよ!……今からするのが、私のファーストなのよ……」
「……はぁ」
「なっ!ため息つくことないでしょ!」
「言っておくが、もう他の男とできないくらいの関係なのだぞ」
「ひっ、そんなこと恥ずかしげもなく言わないでちょうだい……!」





バロックに羞恥心というものはあるのか、かなり危ないラインギリギリのことを言い出し、言ってもいない私が恥ずかしくなってきて、
熱い顔を両手で覆うと、その手の間からバロックが笑っているのが見えた。
結局恥ずかしい目にあっているのは、私ではないか。





「くくっ……いいから、とにかく早く済ませるぞ」
「えっ、こ、心の準備が……きゃっ!」





どうにか説得して止めようとしたが、その言葉を遮るように腕を引かれ、気づけばバロックの腕の中にいた。

文句を言う暇もなく、後頭部を荒々しく掴まれたと思いきや、すぐに口づけられた。
あまり時間をかけたくないのか、早速彼の舌が割り込んできて、唾液が送りこまれる。





「んんっ……んあ、はぁ……」
「……っは、ミレイ、そなたもだ」
「で、でも……私、やったことない……」
「……仕方ない」
「えっ!?きゃ、うわ!」





一瞬面倒くさそうな顔をしたバロックだが、すぐに納得した様子で、私を抱き上げて、私のほうが彼を見下ろす体勢になった。
私の両足は、彼の胸を支えにするように折って、両手は彼の肩に置いている。





「一回、唾液を溜めてみろ」
「!……ん」
「それでうまく舌を使って……遠慮しなくてもいい」





言われた通り、唾液を軽く溜めてから、少々恥ずかしく思いつつバロックに自ら口づけた。
というか、私は舌を頑張って入れてみただけで、あとは彼がすくい取った……みたいなものである。

終わるとすぐに下ろしてくれたのだが、私はすぐにベッドに入ってシーツで顔を隠した。
だって、恥ずかしいんだもの。





「……とりあえず。感謝する」
「……もう顔見れない……恥ずかしい……」
「はぁ。私はちょっと用事があるから、ここは一旦離れるぞ」
「!どこか行くの……?」
「契約が成立したことも伝えねばならんからな。帰るのは夕方ぐらいだが、構わないか?」
「え、う、うん。わかった」
「……寂しい、とか言うんじゃないぞ」
「っ!い、言わないわよ!」





最後に軽く私をからかうと、微笑んでから消えていった。

なんか、複雑な気分だ。
寂しいとは断固として言うつもりはないし、そもそも思っていない。……と思う。

さて、これから何をしようかと、考えるついでに手の甲をさすった。
今も発光しておらず、そもそもいつもと変わらない手の甲である。そこにあるかすらわからないほどだ。

これから、一日一回は己に流れる血を、バロックに捧げる。
そんな生活は、一体どのような気分なのだろう。
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