A vampire of death , love is there?
□3話
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次の日の朝目覚めたら、既にバロックがまた窓台に座っていた。
無理矢理血を吸ったり、首を絞めたり横暴なところがたまにあるが、約束にはとても律儀な性格なのだなと窺える。
「……おはよう、バンジークス」
「おはよう、シュヴェルツ」
会ったのは一昨日だって言うのに、寝顔を見られて、それでもって呑気に挨拶を交わす関係になったとは。
まあ自分がそう選択したのだから、そういう自分に呆れるしかなくなる。
「思ったより早かったね。もう時間切れ?」
「さあ、な。でも、早く決めるに越したことはない」
「ちょっと待って……身だしなみ整えてくるから。そこで待ってるのよ?」
「心得た」
さすがに寝起きじゃあ申し訳ないと思って、顔洗いと、歯磨き、そして髪の毛を梳きに洗面所へと向かった。
洗面台の鏡を見ると、未だに一昨日バロックによって、首筋に吸血された痕が残っている。
亡くなったいとこもこんな感じだったのだろうかと、気の毒になるが、あまり気にするのはやめた。
あ、そういえば上半身の下着着けてないんだった……。
とんでもないことに気づき、急遽昨日脱いだばかりの下着を仕方なく着けることにした。
所謂ブラジャーは、夜寝る時は着けていないのだ。
「ちょ、ちょっと……バンジークス」
「なんだ」
「いつここに来たの?」
「朝日が昇ってからだが」
「っ、私が起きるまで、ずっと何してた?」
「……部屋の様子や、村の景色を見ながら、ワインを。……結局何が言いたい」
だんだんとバロックの目が細められ、うざったそうに疑った顔になっていく。
本当に気づいていないのか、からかっていて、ただ単に演技が物凄く上手いのか。
仕方ない、今は着けているのだから、おとなしく真実を言おう。
「……あ、あのね、私夜寝るとき……上の下着、つ、着けないの……もちろん、日中は着けるけど……」
「…………なんだ、そんなことか」
「な、何よ、そんなことって!」
「私が襲うとかなんとか思っているのか」
「えっ!……で、でも!血は勝手に吸ったじゃない!」
「あのな、私は吸血鬼だぞ。人間でいう毎日の食事のようなものなのだ、吸血行為は」
「っ……!も、もういいわ。やましい気持ちがないのなら」
「元々ない」
結果、朝から言い合いをすると、倍以上疲れるということがわかった。
「……ふう、とにかく。本題に入るぞ。もう決まったな?」
「ええ」
「聞かせてもらおうか」
「……いとこが昔、言っていたの。こういう人生の選択を迫られたとき、楽しい、幸せだって思うほうを選ぶといいって」
「……」
「だからね、昨晩それを思い出して、考えたの。……でもせっかくバンジークスが一晩くれたのに、すぐ決まっちゃった。私、貴方といたいんだって」
「!」
話している途中気恥ずかしくなってきて、ちょっと困ったように笑ってしまった、かもしれない。
私自身もおかしく感じているのだ。
たった数日知り合っただけの相手と、一緒にいたいという気持ちが芽生えるなんて。
でも、いとこに昔言われた通り、もしこれからバロックがいない生活を過ごすことになったら、と考えたのだ。
「もし貴方がいなくても、死ぬわけじゃない。でもね、きっと虚無感に包まれて生きるって思ったのよ」
「……」
「別に、好きとかそういうわけじゃなくて……。ああもう!なんて言えばいいのかわかんない!」
「……くく、まさかそなたのほうから言われるとは思っていなかった」
「ん?貴方もそう思ってたの?」
「私のほうが、そなたの馨しい香りを嗅げなかったら、死んでしまうと思っていた。……本当に、いいのだな?」
「ええ。ちゃんと決めたもの」
私の決心は揺らぐことはなかった。
バロックも真っ直ぐ私の目を見つめてきて、彼の目の中に映る私を見ても、揺らぎは感じない。
すると、彼が少しこちらに近づいて言った。
「そなたの”名前”は?」
「!教えて、なかったね。……ミレイよ。ミレイ・シュヴェルツって言うの」
「ミレイ……ミレイ、か。私はバロック・バンジークスだ」
「ふふ、バロックね」
「ああ。……では、この需要と供給の関係を成立するために、少し儀式を行う。今から言うことを唱えてくれ」
バロックに耳打ちされ、ある言葉を吹き込まれる。
その言葉は本当に契約の儀式のようで、興奮の意味で体が震えた。
「ミレイよ、そなたは私の永遠の供給者となるか?」
「はい。私は貴方の永遠に供給者となることを、ここに誓います」
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