A vampire of death , love is there?

□1話
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どの国にも、いるかいないかわからない生物、または生物外の伝説があるだろう。
ある国では竜であったり、またある国では妖精であったり。生物外だとUFOが有名だろう。

この通り、それぞれに伝説やら噂話は作られ風化していっているのだが、ある少女、ミレイ・シュヴェルツが住む大都市から離れた村では、”ヴァンパイア”が大昔から生息していると伝えられてきた。
その言い伝えは生半可なものではなく、人気が無い森をたまに訪れると、血が点々と地面に染みているのだという。
かと言って、村の住人はそこまで多くないため、誰かが被害に遭ったらすぐに村中に知れ渡るが、ほとんど血を味見するように少しだけ吸って、その吸われた本人は元気であることが多い。

年のいった村の長が言うには、吸血鬼自身が自分の好みの血を探して、その好みの血を持つ人物に憑りついたようになる、という性質のようだ。


―これは、そのミレイという少女と、ある特殊な吸血鬼との物語である。










***










「ミレイ、いとこの館まで、これを持って行ってくれるかい。お母さんの使いだと言えばいいよ」
「うん、わかった!」





ある日、私は母にお使いを頼まれた。
渡されたのは中くらいの底の籠で、何かが入っているものの、上にスカーフがかけられていて、何かはわからない。

母が言ったそのいとこは、私の唯一の親戚で、確か20代前半の元気な青年だ。
いとこは村のはずれの森の奥の、村ではひときわ目立つ館に住んでいる。
私が物心つく前から、いとこに遊んでもらっていたので、村を囲む壮大な森を進まなければならないが、何年も同じ道を通ってきたのだから、怖くない。

ただ一つだけ気の毒なのが、時たま道に血が落ちていることだ。そこは何回も通っても、顔を顰めてしまう。
しかし、いとこにこれから会えると思えば、怖さは吹き飛ぶ。

館の玄関の前に着き、扉の真ん中に付いていたベルを鳴らした。すると、館の中から人の駆ける音が聞こえたので、誰か一人は気づいたのだろう。
音はすぐ近くで止まり、こちら側に扉が開かれた。





「貴方は……」
「えっと、母のお使いに来ました」
「あ、ああ……お母さまの使いですね。実は今、主はいらっしゃらないのです」





現れたのは、おそらくメイドであろう女性だった。
いつもはいとこが大体出てくれるのだが、まあこういうこともあるだろう。
それに、館を持ついとこなんだから、メイドがいてもおかしくないだろうし。





「はあ、そうですか……。では、また帰ってきた時に、シュヴェルツからとお渡しください」
「はい、かしこまりました。……わざわざ、来てくださってありがとうございます」
「いえいえ!では」





そうして籠をメイドに渡し、一礼して来た道を戻った。
去り際、メイドの顔がひどく落ち込んでいたように見えたが、この時は気にしていなかった。

家に帰ると、母が村の市場に買い出しに行ってくるとの書き置きがあったので、留守番していろということだろうとくんで、1階の自分の部屋に戻った。
ちなみに、自分の部屋の扉には鍵が付いており、その鍵穴にしか合わない合鍵を肌身離さず持っている。

その鍵で、扉を開けた。
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