シャーロック・ホームズ

□Web拍手・ホームズ脳内記@〜J
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人形劇ホームズ・ホームズ脳内記G

彼女が事件を解く際に与える力は、想像していたよりも遥かに大きかった。
手始めに、僕のところへ依頼に来る人たちの話を聞かせてやると、事件のトリックだとかはまったく得意でない代わりに……”感情”面のほうで非常に役に立った。

たとえば、僕が推理の末辿り着いた結論や、事件に関わる人物の性格などを聞かせるだけで、動機を明らかにしたことがある。
彼女は女性というのにも加えて、人一倍純粋なのだ。
そのため、赤の他人に良い意味でも悪い意味でも共感でき、心理の鎖を読み取ることができるというわけだ。



「それにしてもすごいなぁ!でもホームズとはまた違ったすごさだよ」
「それは僕も同意見だね」
「そ、そんな……たまたまですよ、本当に。だって私は、ホームズさんが提示してくれる基盤がないと何も……」
「基盤から四方八方に伸ばせるのも、一つの能力だと思うよ」
「ホームズさん……!」



ほぼ純粋な意味を込めて彼女を褒めてやると、そのままに受け止めて顔を赤くさせ、目を煌めかせた。
彼女は喜ぶと顔に出るようだ。

純粋無垢なのは悪いことではないが、扱いやすいという面もあるため、悪用されるかも知れない。
現に似たようなこともあった訳だし。



「彼女の活躍も、ホームズとうまく織り交ぜて記すよ!」
「はい……!よろしくお願いしますね!」
「そういえば、最近の事件がまだ書けてなかったんだ」
「あ……私たち、なるべく邪魔しませんから……ご自由にお書きください」



ワトソンは早速机に向かって、話しかけにくいほど集中していたので放っておくことにした。

すると彼女が、ソファに座る僕に近づいて言った。



「ホームズさん、ロフトのほうでワトソンさんを待っていませんか?」
「……それもそうだね。話したいこともあるし」
「?話したいこと……ですか?」



話しかけた彼女のほうが首をかしげるという、不思議な状況で二人でロフトに上った。

これは余談ではあるが、彼女の分のベッドも追加されたので、誰一人ソファで寝ることはなくなったのだ。
そのそれぞれのベッドに座り、話しやすいよう向かい合った。



「ふふ……私、有名になってしまいました」
「結構だけど、悪影響がなければいいね」
「どういうことですか?」
「有名になることはいいことばかりでもない」



その悪影響を詳しく説明すると、彼女の性格を攻撃することになってしまうのでやめておいた。
その代わりまったく理解できていないようだが、自己完結したようでこんなことを言ってきた。



「私、よくわかりませんが……ホームズさんとワトソンさんがいるので、大丈夫です!」
「!」
「守ってくれるという安心感があるのです。ホームズさんは、特に」



純粋無垢の影響は、案外近いところに及んでいるみたいだ。





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