シャーロック・ホームズ

□Web拍手・ホームズ脳内記@〜J
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人形劇ホームズ・ホームズ脳内記F

「ふわぁ……なんだい?僕の噂?」
「ワトソン!」
「ワトソンさん!おはようございます」



話に熱中しすぎていたためか、ワトソンが眠たそうにあくびをして目をこすりながら、ロフトから降りてきた。
彼女はわざわざワトソンに向き直って、性格でもあるのか礼儀正しく朝の挨拶をした。



「お、おはよう」
「ワトソン、起こしてしまったかな」
「いいや!たまたま目が覚めたとき、二人の話す声が聞こえてさ」
「あの、ワトソンさんがあの壁新聞を、書かれているのですか……!?」
「え!あ、そうだけど……」



すると彼女は、ワトソンの両手を取って彼を称賛し始めた。
文章力も褒めてはいたが、ロマンだとか感情的な面でたいへん称賛していた。

少し、胸がざわざわするのは気のせいだろうか。
案の定ワトソンはほんのり頬を赤らめて、頭をかいて照れている。



「そ、そんな褒められると……嬉しい反面困るなぁ」
「本当にそれ程の実力をお持ちなんですから!」
「僕も賛成だね。そういうのは柔軟かつ素早く受け入れたほうがいい」



この多少遠回りな皮肉に気づいたか否か、彼女は手を離した。
今もなおワトソンは照れ続けていたが、もうよしてやろう。



「二人に、訊ねたいことがあるの」
「なんだい?」
「私も……あの壁新聞のように、貴方たちのお手伝いをしたいのです」
「!」
「でも、君はあの”事情”がある。やっと解放されたのだから、ゆっくりと有意義に過ごしたほうがいい」



ワトソンも僕の言うことに何度も頷いていた。
彼女には、学校という大きなルールは必要とはいえ、彼女自身を縛る縄は解いた状態で、ゆっくりと過ごしてほしいのだ。
それは話を聞いただけでよくわかる。



「はい……それはもう、痛いほどわかっています。でも、貴方がたがくれる刺激はきっと……十分有意義だと、思うのです」
「!……」
「どうする?ホームズ」



僕は事件を解いているときのように思考を巡らせた。

しかし、一人の女性のためにここまで神経を使うとは。
きっと彼女と出会うきっかけとなったあの人は、ありえないと鼻で笑うだろう。



「女性は、常に感情がつきまとう。それはきっと僕がどんな知恵を蓄えようと、そもそも人類の根源であり……性別という隔たりによって、永遠にわかり得ないだろう」
「……ホームズ」
「だけどね。それが存在することは、決して無意味ではないと思うんだ」
「と、いうことは……」
「まずは君を、事件に干渉させてみよう」



既に僕の些細ながら機械的な隙間に、君が干渉しているんだ。





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