シャーロック・ホームズ

□Web拍手・ホームズ脳内記@〜J
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人形劇ホームズ・ホームズ脳内記E

「おはよう。朝は早いんだね」
「その……閉じ込められたときの名残です」
「!それは、モリア―ティ教頭が?」
「朝起きたら……というより、身の回りの世話を任されていた、ので……モリア―ティ教頭が起きる前に起きておくのが、決まりというか」



長きに渡るモリア―ティからの束縛は、彼女の実生活までも影響を及ぼしていた。
それが理由に含まれるかはわからないが、まだ話すのがたどたどしく、同級生にも関わらず硬い話し方である。



「……まだこれからなんだ。僕らはなるべく、君を解放してやりたい」
「そこまで、考えてもらえるなんて……申し訳ありません」
「当然だよ。それよりも、君はひとまずここで暮らすんだ。せめてここだけでも疲れないような場所であればいい」
「……よろしくお願いします、ホームズさん」
「……ああ。よろしく」



彼女はわざわざここまで近づいて、深々とおじぎをした。

―彼女の微笑は、今まで見た人の誰よりも穏やかだった。
おかしいな。精神に暖かな雲のような煙が垂れこむことは、今までに無いはずだ。



「あ。……名前、教えていませんでしたね」
「ああ……君のことを探求することに打ち込んでいて、忘れてしまっていた。でも君の名前はわかるよ」
「えっ……ど、どうして……?」
「そこの机にある手紙。宛てる人物は遠くにいるんだろう。君の住所とフルネームが書かれてある」
「!素晴らしい推理ですね……!そうです、母親に出すんです。事情があって国外におりますから」
「こんなものじゃ推理とは言えないけどね」



まだ僕が眠っている間にでも書いていたのか、ソファの前にある机に封筒が置いてあり、そこに彼女の名前と住所らしき地名が書いてあった。
それより、そのことを彼女に言い当てたら、彼女はたいそう驚いていた。

言い換えるならば、感銘を受けたという顔だ。非常に目が星空のように煌めいている。



「その、以前こっそり……えーと、新聞らしきものを見たのです」
「……壁新聞だね?」
「ええ!それで……非常に心を打たれました。ホームズさんは、すごいことをなさっています!」
「ふ、そこまで称賛されると逆に反応が難しいね。ちなみにうちのワトソンが書いているんだよ」
「まあ……!素晴らしいコンビですね!」



このように、彼女に何か言葉を与えれば、初めて見たり聞いたような反応を返してくれる。
未だに彼女の目は煌めいており、それが純粋なる心からの反応だということを示していた。





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