シャーロック・ホームズ

□Web拍手・ホームズ脳内記@〜J
4ページ/12ページ

人形劇シャーロックホームズ・ホームズ脳内記B

”彼女”にあった衝撃的な傷を見た次の日、早速話しかけようと意を決した。
いつも通り授業中は彼女を見続けて、帰り道人が少なくなるまで待った。

どうやら、彼女に話しかける者はいないようだったから。



「ねえ、君」
「!!」



また彼女は驚いた。
保健室で出会った時だってそうだ、ひどく驚いてコロコロと表情を変える。

しかし、廊下で話しているのを見られるのはマズい。
ワトソンに上手く説明して、二人きりで話しをさせてもらうようにしよう。



「僕はシャーロック・ホームズ。……君に聞きたいことがあるんだけど、一緒に僕の寮まで来てもらえるかな?」
「……ほ、ホームズ……?」



初めて彼女の声を聞いた。
まだ怯えきっていて囁くような声だが、透き通っていて心に届く声なのがわかる。
この様子だと、僕のことを知っているようだ。これは手がかりになるぞ。

しばらくそこで立ち往生しており、やっとのこと彼女が認めてくれたので、早速221Bへ連れて行った。



「ほ、ホームズ!?その子は……」
「あまり騒がないでくれ。彼女が驚く」
「あ、ご、ごめん」



案の定ワトソンがほぼパニックのように騒ぎ出す。
僕が女の人を連れて来たからか?

まあそれはさておき、ワトソンに事情を説明して二人きりの空間を作ってもらうことにした。
彼女をソファに座らせて、クッションでも持って落ち着くよう促した。



「……何からなら話ができそう?」
「…………」
「……さっきの君の反応。僕のことを知っているのかな?」



連れて来れたはいいものの、どうも話そうとしない。
まず自分が気になっていたことを訊ねてみた。



「……有名、だから」
「壁新聞、かな」
「いいえ……噂を、聞いたもので……」
「噂……。じゃあ少なくとも、このビートン校にいたんだね?」
「!……え、ええ」
「同学年だということは、大体わかる。だけど……数日前に初めて顔を見せた、みたいだ」



誘導尋問をするように、だんだんと真相を彼女の口から引っ張り出そうと、追い詰めてゆく。
それが効いているのか、彼女はだんだんと顔の筋肉が強ばってきて、クッションがへこむほど力強く抱きしめていた。



「う……あの、」
「なんだい?」
「どう、しても……言わなきゃだめですか……?」
「……もし君がその秘密を抱えていることで、”苦しんでいない”なら僕は触れない。だけど、そうは見えないからね」
「…………ここには、入学してからずっと、います。でも、ずっと……”縛られて”いて……」



僕の中で、ただの点だったものが一つに凝集していった。
もうすぐだ。





次→C
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ