Sweet dreams-DGS

□4万人突破記念小説
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Enoch Drebber/寝ぼける



***
「……ん、」





工房の天窓から差し込む光に自然に目が覚めた。
私はその光に直感的に朝だと思ったが、いつもの朝には足りないものがあった。

いつもならば、ベッドに背を向ける形でキッチンで朝食を作っているこの工房の主がいない。
天窓から差し込む光だけでなく、その主が作る朝食の匂いが"朝だ"と絶対的な認識をもたらす。

ふと自分のすぐ隣に目を見遣ると、そこにはこの工房の主であるドレッバーが眠っていた。





「……朝ごはん、私が作ろう」





必ずドレッバーが私より先に目覚め、朝食を用意している。
だがここ最近、ドレッバーは仕事に明け暮れて徹夜続きだったのだ。
いつも作ってもらっているし、今日は私が朝食を作ってあげよう。

毎朝ドレッバーがしているように材料を揃えて調理を始める。
料理は上手かと問われると自信はないが、基本的なことはこの工房に来る前に習得している。





「……ん、ミレイ……?」
「!ドレッバーさん、まだ寝ててください!」
「…………だけど、」
「ここ最近、徹夜続きだったでしょう。今日は私が朝ごはんを作るので、ゆっくり寝てください。これはお願いです」
「……わか、った」





ドレッバーは目を開けて、ベッドに横たわったまま話しかけた。
しかしあまり呂律が回っておらず、声は眠たそうにくぐもっている。

上体を起こそうとするドレッバーを止めるために近づくと、
眠たいのにも関わらず強い力で腕を引かれて、ベッドに倒れ込んでしまった。





「きゃっ!ど、ドレッバーさん……!?」
「……」
「あ、あの、朝ごはんがまだ……」
「……ミレイ」
「は、はい。何で、んっ、!」





虚ろげながらもハッキリと名前を呼んだと思えば、ドレッバーは私の上に覆い被さりキスをした。
眠っててください、と言うために手を伸ばすも、力強く握られ動かせない。

いつもよりも長いキスに意識が遠のきかけた時、ドレッバーは私に倒れ込んできた。





「っ、はぁ、ドレッバーさん、」
「ミレイ……、てる」
「え……?」
「ミレイ、愛してる」
「っ!!」
「オレは……ミレイが、笑顔でいれるなら……」





倒れ込んだまま、ぽつりぽつりと呟く。
まさかこんな言葉を聞くとは思わなかった。
ドレッバーのことは本当に好きだし、彼からも毎日愛を感じているけれど、直接的に聞いたことは無かった。

最後まで言葉を聞く前に、ドレッバーは寝息を立て始めた。
しばらく放心状態だったものの、ハッと意識を今に戻して彼にシーツをかけてあげた。


さっきの言葉が嘘であれ本当であれ、これは寝ぼけてるせいだ。
と自分に言い聞かせた。
でないと、ドレッバーへの想いが止まらなくなりそうだから。

だけど何日経っても、ドレッバーの言葉が私の心の中で語り続けていた。



***
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