Sweet dreams-DGS

□4万人突破記念小説
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Sherlock Holmes/目が合う
※221Bメンバー登場



***
「僕はとても気分が良い。だからね、今日は独奏会を開演するとしよう!」
「はあ、そうですか」
「何だいミスター・ナルホドー。そのシケた顔は」
「し、シケた顔……」
「そんな顔をしてる場合じゃないよ。君には呼んでもらいたいお客さんがいるんだ」
「お客さん……?」





ある日の朝のこと。それも太陽が昇ったばかりのことだ。
私の花屋兼お家に、確かホームズの友人だという人物がやけに申し訳なさそうにやって来た。
確かナルホドー、だっけ。

どうやらホームズが気まぐれで独奏会を開くと言い出し、お客さんとして私に来てほしいということでナルホドーは来たそうだ。

ここだけの話、私はホームズのことが好きだ。
さすがに朝呼ばれたのにはイラッと来たが、行かない理由は無い。
ということで、私は手ぶらで221Bにやって来た。





「やあ、ようこそミレイさん。どうも毎日見てる人だけじゃ飽きちゃってね」
「それ僕のことですよね?」
「お招きありがとう、ホームズ。ただこの時間はちょっと……」
「ミレイちゃん、朝ごはん用意したんだけど、イヤかな……?」
「あ、アイリスちゃん!全然嫌じゃないよ!寧ろ嬉しい!いただくよ」
「ミレイさまが来て賑やかになりましたね!」





221Bに入るなり一転してお祭り騒ぎのような雰囲気になる。
最近は日本人の留学生らしいナルホドーと、その法務助士であるスサトが訪れて合計4人になったが、
元々ホームズとアイリスだけでも賑やかだ。

私は倫敦で独り立ちして花屋を営んでいるから、ちょっと羨ましかったりする。

そんな風にぼうっとしているととっくに朝食が用意されて、日本人二人とアイリスは自分の場所に座り、
ホームズは既にストラディバリウスを構えていた。





「僕の気が済むまで弾くからそのつもりでね」
「え、せめて昼になるまででお願いします……」
「まあまあ、いいじゃない」





そしてホームズのタイミングで音を奏で始める。

調子がいい時のホームズの演奏は本当に心地よい。
それよりも私は、演奏をじっと聴いているフリをしてホームズのことをじっと見つめていた。


なんて整った顔。
彼を初めて見た人はその観察眼や推理力に目が行くと思う。
もちろん私もそうだったのだが、そんな純粋論理がこのホームズから繰り広げられるということが何よりもときめいた。

ふと、ホームズと目が合った。
もしかして気づかれた……?

決して疚しいことをしている訳でもないが、少し焦りを感じる。
するとホームズは器用にバイオリンを弾きながら、私の方を見てウインクをしたのだ。
胸がどきりと高鳴って思わず俯く。そうしたら逆に見ていたことがバレるというのに。

おずおずと顔を上げ、再び独奏会の客になり切る。
何だかホームズと目が合う回数が増えた気がしつつ、時間は進んでいくのだった。





***





「ミレイ、僕のことを見てたね?それも熱烈に」
「っ!?ち、違うわよ!す、ストラディバリウスを見てたの」
「おや、興味があったのかい?」
「う……」
「本当に、僕の可愛い恋人は天邪鬼のようだ」
「こ、恋人っ!?私、そんなつもりじゃ……」
「あれ、だから僕を見て目を逸らしたんじゃないかな?」





口論で負ける、いやそもそも口論にすらならないことを知ってても私の口は素直じゃない。

どうやらホームズは、私がホームズを想うよりも想っていたみたい。
というか一度も好きなんて言われてないのに、勝手に恋人だって言うなんてずるいわ。





「なら今言ってあげよう。僕は世界で一番に、ミレイのことが好きだ」
「!!……ほー、むず」
「ミレイが世界で一番だし、ミレイのことを一番愛しているのも僕だ。と、いうわけだが、君は?」
「……私も。世界で一番なのはホームズだし、ホームズが好きなのは世界で私だけよ」





再び、深く互いの目を見つめ合う。
見つめられるだけで、どうしてこんなに愛おしいのかしら。





「ということで、ミレイはここの専属花屋になってもらわなくては。いちいち通っていられるほど名探偵は暇ではない」
「え?じゃあ今花屋兼お家の部屋はどうなるの?」
「そりゃあ引き払うしかないだろう。安心したまえ、これからの場所は十分に確保してある」
「……」





まさかただ独奏会を聴きに行った日が、同棲開始の日になるとは思いもせず。
動揺は隠しきれなかったが、すぐに部屋を引き払っている自分がいた。



***
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