Sweet dreams-DGS

□16話
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朝、体を何かがくるんだような温かさを感じた。
最初に思いつくのは、いつも私を抱きしめるバロックのことだが、それに似ているようで違うもののようだ。

それを確かめたいと思ったが、この温もりがあまりにも気持ちよすぎて目を開けたくない。
そのような二つの気持ちが争って、もじもじしている間に時間が過ぎてゆく。

答えを出すより早く、隣で眠る愛する人が目を覚ました。





「……起きているか?」
「……ええ、半分……」
「私は起きるが、二度寝してても構わぬぞ」
「ん……」





確かにこのままもう一度眠ってしまいたいと一瞬過ったが、バロックが目を覚ましたのなら、私も目を覚ましたかった。

そのついでとも言わんばかりに、私をくるむ温もりの正体を知った。
それは窓から差し込む太陽の光で、窓を介して直接ベッドにあたっていたのだった。





「一度目を覚ましたら、この朝日があたっていたのです。それが心地よくて……」
「確かに……太陽にあたることは気持ちのよいことだ」
「はい。……まだ、朝食には早い時間でしょうか?」
「む……早すぎることはないが、」





バロックがそう言いかけた途端、扉をノックする音が響いた。
彼が見に行って鍵を開けると、そこにはホームズがいた。





「やあ、おはよう。死神くんに……ミレイさん」
「……何の用だ」
「あ……おはようございます!ホームズさん」
「キミたちが一番最初なんだが……朝食後の行動を大まかに伝えようと思ってね」





今日の予定はこうだ。

まず各々が自由な場所で朝食をとる。
その後、今日は観光街に赴くため、軽い荷物―財布など外出する際に必要なもの―を持って、ロビーに集合。
そこでまた、ホームズが指揮をとるようだ。





「まあ時間はたっぷりあるから、その場の成り行きで決めようと思うんだがね」
「適当だな」
「ははは!そんな感じでいいんだよ。昼は観光街で食べるから、昼までに集合してくれればいい」
「わかった」
「では、話はそれだけだ。また後ほど!」
「ありがとうございました、ホームズさん」





一通り話を終えると、ホームズは去っていった。
私たちが初めだと言っていたから、これから日本組たちにも伝えに行くのだろう。





「……だ、そうだ。さてどうする?」
「時間はたっぷりありますねぇ……もう少し、部屋でゆっくりしましょう!」
「なら……」





まだ時間に余裕があるとわかると、バロックが向かい合う一人掛けソファの狭間にある、丸テーブルへ向かって行った。
何をするのかと様子を見ていると、部屋に着いてからずっとそのテーブルに置いてあった、バロック愛飲のワインを手に取ったのだ。

まさか、朝から……。





「ば、バロックさま。朝からお飲みになるつもりですか……?」
「別におかしなことではなかろう?」
「う、それはそうですが……」
「仕事でもあるまい。多少酔っているくらいが楽しいと思うが」
「……はい」





負けた。

バロックがソファに座ったように、私も向かいのソファに座る。
そうして、ワインを聖杯に注ぐ仕草を見つめていた。

ふと急に思い立って、部屋の窓を開けてみた。
近くにある海の潮風が、朝の爽やかさと混ざり、部屋へ入り込んでくる。
なんて、すがすがしい朝なのだろう。これならバロックも気持ちよく飲める。





「風が気持ちいいですね!」
「あぁ」
「朝に飲むのも悪くないですね?」
「まったくだ。……どうだ?」
「飲みません。私はお酒弱いですから、酔ってしまったら大変です。バロックさまで十分ですわ」
「くく、相変わらずだな」





気分のよさと、バロックのほろ酔いが、お互いに舌を饒舌にさせた。
と言っても、観光街での食べ物のこととか、当たり障りのない話ばかりだったけれど。
それでも話が膨らんで、朝食は昨夜も行ったバイキングにしたが、昼をいっぱい食べれるようにとかなり量を減らした。

朝食をとり終え、再び部屋に戻り、昼に向けての準備を始めた。
ユカタからいつもの服に着替え、片手が空く程度の荷物をまとめる。





「ミレイ、出来たか?」
「はい、準備万端です!」
「では……探偵のところに向かうとするか」





部屋の様子をざっと見渡したが、外出のためのチェックは既に終えられていたようだ。
バロックの後ろをついて部屋を出ると、彼が勝手に戸締りも確認してくれていた。
私が気がついた時にはバロックが全てやり終えていた、そういうことは二、三度では収まらないほど経験した。

階の中央から螺旋階段を下り、昨日ぶりのロビーに到着した。





「おや、君たちはいつも早いね」
「早すぎましたかね?」
「大丈夫だよ、ミレイさん。適当に座っていてくれたまえ」





ロビーではホームズがいて、指揮をとる彼を除いて一番に私とバロックが到着した。
どうやらロビーには、休憩や何かを待つ時のためのソファとテーブルがいくつか用意されているようだ。

そこで他のメンバーを待っていようと、バロックと並んで隣に座ろうとすると、腕を引かれて膝の上に座らされた。





「バロックさま、み、皆様の目があるところですよ……?」
「いいだろう、別に。秘密にしていることでもなかろう?」
「そ、それとこれとは……!と言いますか、部屋でしてくれればよろしかったのに」
「今したい気分だっただけだ」
「まったく、朝から元気なことだね二人とも」





まったく、辱めを受けているようにしか思えない。
ホームズにも、赤の他人にもそうだが、これから来るメンバーにも見られるではないか。

ああ、視線が痛い。
いや、私たちがいる方向を見ているだけで、私たちを見ているとは限らない。
それでも背徳感のようなものを感じる。

そして、こちらへ向かってくる足音が二人分。





「ホームズさ……、え?」
「おや、ミスターナルホドーにアソーギ。そんなに動揺してどうしたんだい?」
「ミレイさんと、ば、バンジークス検事……」
「何だか、申し訳ございません……」
「こ、これが大英帝国……!?」
「違います!」
「なぜ否定するのだ」





リューノスケとアソーギが到着すると、騒ぎになりかけていた。
まだ私と歳の違わない二人は、私とバロックの様子に顔を赤くさせる。
お国柄もあるのか私にはわからないが、破廉恥な話が苦手なのだと思う。

まず私も得意ではない。





「みんな〜!待たせてごめんね〜!」
「うわー、大胆」
「まあ、なんと……!熱々でございます……!」
「わあああ……もうダメです、恥ずかしい……!!」
「これで全員集合したね」





そしてしばらくもしないうちに、アイリス、ジーナ、スサトと国境を越えた女子組が到着した。
ジーナは呆れかえったように、スサトは頬に手を当てうっとりと、私とバロックの様子を見て言った。

まさに公開処刑の状況に、私は両手で顔を覆った。
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