文豪ストレイドッグス

□嫉妬
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「どういう事だ…」
「そんな眉間に皺寄せんなって。」
「太宰はどうした…」
「さぁな。」
「アンタって人は!」


芥川は激怒した。人虎捕獲計画の囮として拐った太宰の姿が忽然と消えていたのだ。芥川は中原の胸ぐらを掴むと先刻まで太宰が繋がれていた手枷のぶら下がるコンクリートの壁に背中を叩きつける。
激怒する芥川とは対照的に中原は涼しげに気取りとぼけていた。


「あれだけ見張っいてろと言っただろ!」
「仕方ないだろ厠から帰ってきたら居なかったんだから。」
「仕方ないで済む話か!」
「芥川、」


怒りを通り越し取り乱す芥川に視線を送り彼の名前をひと言重く呟く。その声に我に返る芥川。


「アイツはもうここの人間じゃねぇ。それに俺とアイツはとうの昔に終わった。手助けなんかしてない。勘違いするな。」
「…くっ。」


芥川は唇を噛み締め中原から手を離した。太宰の居場所を突き詰めた時には既に新しい相棒と部下が居た。そこには笑顔で相棒を茶化し頭を撫でて部下を愛でる彼。鬼軍曹のように芥川をしごいた太宰は居なかった。太宰に褒めてもらうためならどんな苦痛も耐えた。しかし彼は1回も褒めた試しがない。


「お前人虎に嫉妬してんのか?」
「それがどうした。」
「聞いただけだよ。ったく太宰のどこがいいんだか。」


中原は過去を思い出したとばかりに己の肩を抱き露骨に嫌がった。
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