文豪ストレイドッグス
□哀しみの果て
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今日は特にエスプレッソが濃く感じる。気分を変えて頼むもんじゃない。
「少し昔の話をしよう…」
どうして今日ばかりは饒舌なのか。こんなに気が晴れないなら水にジャボーンと飛び込めばいいだけなのに…。
「敦くんには生涯忘れられない人って居るだろうか。悪い意味ではなくいい意味で…。そうだな、初恋の相手とか。」
「初恋…。」
敦くんの顔が微かに紅潮するのが分かった。
「どんな人だったんだい?」
「歳は3つ上で孤児院でもみんなのお姉さんみたいな人です。僕みたいな弱い奴にも接してくれて…」
「思いは伝えたの?」
「伝えるとかそういうの迷惑かなとか思ってずっと彼女を見てることしか出来ませんでした。気持ちがやっと固まった頃には彼女は成人して孤児院から出ていました。」
「…私と少し似ているかもしれない。」
「太宰さんとですか?」
「うん…。」
冷めて美味しくない濃いだけのコーヒーをすすり気持ちを落ち着かせる。